河東泰之の1998年度研究概要

今年度は作用素環と部分環の組に対し,braidingを使って, 部分環の自己準同型を大きい環に 延長する手法について研究した.これは1994年にLongo, Rehrenが定義したものだが, Xuが少し別の状況で1996年に研究を深め,さらにBockenhauer, Evansが alpha-inductionという名前をつけて1998年に詳しく調べていたものである. 一方,Ocneanuはまったく別の(ように見える)状況で,Dynkin図形に関連して chiral generatorについて1994年から研究していた.今回,Bockenhauer, Evans との共同研究で,定義をうまく拡張すれば,同じ状況でalpha-inductionと chiral generatorの両者が定義できて,しかも一致するということを証明した. さらに両方の手法を合わせて用いることにより,conformal field theoryの modular invariantとの関係も解明することができた.Conformal inclusionから 出発した時は,modular invariantから作用素環的に有用な情報を取り出すことが でき,また逆に作用素環的状況から出発した場合には,modular invariant(の 組み合わせ論的一般化)が計算できるのである.

さらに,この手法の応用として,S^1上のvon Neumann環のnetと4つの区間から 生じるsubfactorについて,Longo, Muegerと研究した.これについては,Wassermannの 手法を用いてXuが研究していたが,quantum doubleに類似のLongo-Rehren construction との関係は予想にとどまっていた.我々は,Xuの構成したものは,Longo-Rehren constructionと同型であることを示し,さらに一般的な状況でのLongo-Rehren constructionとの関係も明らかにした.

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