河東泰之の1997年度研究概要

Subfactorの分類のためにA. Ocneanuが導入した代数的不変量paragroupは, 量子化されたGalois群とも呼ばれる.古典的なGalois理論の類似として, 作用素環のGalois群の部分群と,中間環との対応を考えることは昔から 行われているが,本年度はそのGalois対応の「量子化」について研究した.

Subfactor理論ではII_1 factorと呼ばれる作用素環の組, N\subset Mを考える.これから生じるparagroupと呼ばれる代数系 は(有限)群の概念の量子化と思える.そこで,Galois対応の量子化とは, N\subset Mの中間環と"subparagroup"との対応を見出すことである と期待される.しかし,中間環に対応するparagroupを"subparagroup"と 呼ぼうとすると,"subparagroup"の"subparagroup"を考えた時に, それはもとのparagroupの"subparagroup"には一般になっていないと言う 問題が生じる.このため,Ocneanuのアイディアに基づいて佐藤が導入した equivalent paragroupの定義を用い,quantum 6j-symbol込みの fusion rule subalgebraの考えを使って,subequivalent paragroup を定義した.さらに,これをOcneanuの導入したgeneralized intermediate subfactorと組み合わせ,subequivalent paragroupとgeneralized intermediate subfactorの間のGalois型対応を確立した.これは, A型のJones subfactorについてのOcneanuの仕事の一般化になっている.

もとのsubfactor N\subset MがPopaの意味で strongly amenableであるときは,equivalence/subequivalenceを 一つのcommuting squareで記述することができる.これには佐藤の, finite depthを持つequivalent subfactorのcommuting squareによる特徴づけを 一般化したものを用いる.そのため,compactness argumentの部分を うまく別のものに置き換える必要がある.また,Popaによって考えられた Popa systemのsublatticeと,ここでのsubequivalent paragroupの概念との 関係も明らかにした.

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