河東泰之の2002年度研究概要

今年度はまず,佐藤信哉,和久井道久との共同研究[38]で,unitary 6j-symbol から生じる3次元 topological quantum field theory について調べた. Turaev-Viro-Ocneanu の構成法によって,unitary 6j-symbol から 3次元閉多様体の複素数値位相不変量を作ることができる.一方, unitary 6j-symbol に対して,Drinfel'd の quantum double 構成法の 一般化が Ocneanu によって考えられているので,これを適用すれば modular tensor category が作り出せる.すると,そこから,Reshetikhin-Turaev の構成法でやはり,3次元閉多様体の複素数値位相不変量を作ることができる. 当然,この二つの位相不変量の関係が問題になるが,両者が一致することを 我々は証明した.Unitary 6j-symbol は作用素環論における subfactor から 生じることが Ocneanu によって知られており,通常の量子群論で知られて いるもののほかにもいくつか例が構成されている.佐藤,和久井はこの結果を 用いて多くの例について具体的な計算を行っている.

ついで,Longo と,作用素環の2次元共形ネットの分類[40]について研究した. 「運動群」が微分同相写像群である場合は,実数に値を持つ不変量 "central charge"が定義できることに基づき,central charge が 1未満の 場合の完全分類を与えた.1次元共形ネットの場合について,同様の分類理論を Longo と昨年度に[36]で得ており,そこでも,A-D-E 型 Dynkin 図形の対が 現れるが,1次元の場合は,D_{2n+1}, E_7 が現れなかったのに対し, 2次元ではこれらも分類表に現れる.1次元の場合の分類結果を用いるのだが, tensor category の 2-cohomology群が新たな研究対象として自然に現れる点が 新しい.Virasoro algebra に関連した tensor category について, この cohomology 群の消滅定理を示すことが重要なステップとなる.

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