数学II,東京大学教養学部(文系,1年生)
水曜1限,9:00-10:30,2010年冬

TA: 粕谷直彦

524教室

講義のまとめ:

  1. 10月13日
    0. ガイダンス
     * 諸外国における同年代を意識せよ。
     * 「わからない」ということに正面から向き合う。わからないことを鵜呑みにして「記憶」してしまうと思考が止まってしまう。「なぜ」を突き詰めて、わからないことを自分の中で大事に育てるということ。
     * この数学IIでは、公式等の知識ではなく、将来に役に立つための思考力と吸収力を鍛えることを重視する。
     * (経済学等で使われている)数学をブラックボックスとして鵜呑みにせずに、芯から理解するための知力を鍛える。
     * 少ない概念で難しい問題を解く(小中高での数学) ⇒ 新しい概念を理解して、論証を積み上げ、芯となるものを理解する(大学の数学)
     * この講義を通じて数学を好きになってほしい。
    1. 行列の定義 と演算
     行列の表記法 (大きなサイズの行列にも適用できる抽象的な記法と視覚的な理解)
     行列の積の定義
     和の表記法
    [ 演習問題解答 ]
  2. 10月20日
    行列の積の3通りの理解法
     抽象的な公式による理解、図による理解、例による理解

    行列の積を用いることによって既知の問題の理解を深める2例
     例1.連立方程式の行列表示
         ポイント:パラメータを動かした時の解の存在・非存在を系統的に理解する
     例2.数列を表す漸化式の行列表示
         フィボナッチ数列の極限を行列の冪乗の問題として捉える
         (この議論では、後述する行列の結合法則が必要になる)

    二重数列と二重和
     二重和の可換性の理由
     ダミーの文字(動く添え字)と、固定した添え字の区別を明確に。

    行列の積の結合法則とその論証
    [ 演習問題解答 ]

  3. 10月27日
    鶴亀算、連立一次方程式、手法と到達目標
    連立一次方程式の行列表示
    係数行列と拡大係数行列
    解を不変にする式変形 → 行に関する基本変形
    [ 演習問題解答 ]
    (11月3日 休日)
  4. 11月10日
    行基本変形に関する標準形
    定理 4.1 行基本変形に関する標準形
    定義 4.2 行列の階数
    [ 演習問題解答 ]
  5. 11月17日
    定理5.1 連立一次方程式の解の存在、自由度と拡大行列の階数
    定理5.1 の証明
    連立一次方程式の解の表し方
    [ 演習問題解答 ]
    (11月24日 駒場祭後片づけによる授業休止日)
  6. 12月1日
    連立一次方程式の解の存在、一意性の必要十分条件の証明)
     (係数行列と拡大係数行列の言葉で書く)
    解のない連立一次方程式の条件を少し変えたとき、解は存在するか?
     (なんとかなる? にっちもさっちもいかない?)
    掛け算と割り算
     割り算=逆数 & 掛け算
    行列の単位元と逆元(逆行列)
    逆行列の一意性
    [ 演習問題解答 ]
  7. 12月8日 中間試験
    [ 試験問題解答と講評 ]
    (講義レジュメ) 掃き出し法による逆行列の求め方
  8. 12月15日
    2次元平面,3次元空間の内積
    ピタゴラスの定理、余弦定理の3種類(幾何、ベクトル、座標)の記法とその高次元化
    ベクトルの内積
    2次元平面の座標で表した平行四辺形の面積の公式
    3次元ベクトル空間の外積の定義
    外積の性質
    [ 演習問題解答 ]
  9. 12月22日
    3次元ベクトルの外積の意味
    外積の性質
    3次元空間のベクトルで表した平行六面体の体積の公式
    平行六面体の体積と行列式
    3次正則行列 A の逆行列の公式(外積を用いた表示)
    [ 演習問題解答 ]
  10. 1月12日
    目標:行列式の一般公式を理解する
    n 個の文字の置換の5種類による表記法とその対応関係 (置換、数の並び換え、写像、ひも、行列による表記(配置))
    置換の積(写像による定義と、ひもによる計算法)
    逆置換の定義とひも表示における意味
    ひもの交点数による置換 σ の符号 sgn(σ) の定義 (well-defined であることの証明)
    [ 演習問題解答 ]
  11. 1月19日
    行列式と逆行列

        行列式の幾何的意味(復習)
       線分の長さ、平行四辺形の面積、平行6面体の体積、...
      行列式の代数的定義(先週と今週)

      逆行列の求め方
       行基本変形に基づく掃き出し法(既習)
       外積を用いる方法(3次正方行列の場合)(既習)
       余因子展開,Laplace の展開公式(今週)

      ひも表示を用いた行列式の定義を3 次正方行列で理解する

      余因子展開,Laplace の展開公式
      余因子行列
      行列とその余因子行列の積は?
      逆行列の公式
      特定のひもとそれ以外のひもの交点数(証明の鍵)
    [ 演習問題解答 ]

  12. 1月27日(木)
    ※今週は水曜日ではなく、木曜日に講義が行われますのでご注意ください。

    定理 det (AB) = det(A) det (B)

    鍵になるのは以下の補題("ひも"の議論ですぐに証明できる)

    補題 sgn(στ) = sgn(σ) sgn(τ)

    定理 n次の正方行列 A に関して以下の3条件は同値である
       (1) A が逆行列をもつ
       (2) det (A) が 0 でない
       (3) rank A= n
    (今日は (1)と(2)の同値性を証明した。 一方、第6回・7回の講義で(1)と(3)の同値性を学んでいるので、(1)(2)(3)が同値と なる。 なお、復習を兼ねて、(2)と(3)の同値性の直接証明するアイディアも概説した。)

    固有値、固有ベクトル
    固有多項式
    行列の対角化とその意義
    [ 演習問題解答 ]

  13. 2月2日(水) 期末試験
    [ 試験問題解答 ]

Home EnHome Jp

© Toshiyuki Kobayashi