Discrete Branching Laws of Unitary Representations and their Applications,
colloquium, Kobe University, Japan, 6 June 1997.

「ユニタリ表現の離散的な分岐則とその応用」
神戸大学談話会,1997年6月6日

G の既約ユニタリ表現を部分群 H に制限して得られる既約分解を分岐則(物理でいう breaking symmetry)という.無限次元表現の分岐則は H の既約ユニタリ表現の直積分(離散スペクトラムと連続スペクトラム)として記述される.ここでは,GH も実簡約リー群(例えば GL(n,R))の場合を扱うが,その場合でも既約分解がどのようになるか(「分岐則」)は,無限次元表現の場合,Weil 表現に関する Howe 対応などの特殊な場合を除いて現在でも殆ど知られていない.

分岐則において離散スペクトラムのみ現れる場合は,具体的に深く研究できる重要な対象と考えられる.離散的な分岐則をあたえる例は,従来の「表現論の常識」に反して,実は豊富に存在することを数年前に気がついたが,当時証明できた十分条件が,必要条件でもあることをのべる.さらに,ユニタリ表現の離散的な分岐則についての一般論を展開することにより, 「Wallach 予想」の肯定的解決が証明できる. また, 「離散分岐則」の一般論を「道具」として用いることにより

  1. 局所対称空間のトポロジー — リーマン対称空間の算術商として得られる modular symbols の消滅定理(織田孝幸氏との共同研究)
  2. Lp-非可換調和解析 — 半単純対称空間を特別な場合として含むクラスの等質空間の離散系列表現の構成
  3. 超幾何関数 — Gauss-青本-Gelfand による超幾何微分方程式の高階への拡張である志村-関口-大島-谷崎らによる微分方程式系の解空間の次元評価(関口)
などに応用されるなど,最近他の分野との接点が生まれつつある.談話会では,こういった現状を,非専門家向きにできるだけわかりやすく概説したい.

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© Toshiyuki Kobayashi