第3回高木レクチャー招待講演
牧野淳一郎
(国立天文台理論研究部)
平成19年11月23日(金)11:30--12:30, 15:20--16:20
東京大学大学院数理科学研究科大講義室

手作り計算天文学
--- ハードウェア,アルゴリズム,ソフトウェア,サイエンス
牧野淳一郎
(国立天文台理論研究部)

Abstract

ここでは, GRAPE および GRAPE-DR プロジェクトについて概観します.GRAPE プロジェクトは天文学における重力多体問題を数値積分するための専用計算機 で,その基本的なアイディアは粒子間の重力相互作用を計算するためのカスタ ム回路を開発し,それを汎用の計算機につなぐ,というものです.このような 構成にすることで,非常に高い性能と,比較的広い問題への適用可能性を両立 させることができました. 2002 年に完成した GRAPE-6 は,64 Tflops (Tflops は1秒に1兆回の四則演算をする速度)と当時世界一の性能を,他の汎 用計算機のほぼ 1/100 の開発コストで実現しました.現在開発中の GRAPE-DR では,従来の GRAPE とは異なり天文学以外の問題にも適用可能ですが,それ でも他のアプローチの数十倍の価格当り性能を実現します.
講義では,恒星系力学の基本的な物理について概観した後,汎用計算機の技術 的な進歩,我々のプロジェクトの歴史,数値計算法の進歩,いくつかの最近の トピックスを扱います.




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Takagi Lectures