|
2026年10月11日(日)16:45--17:45 2026年10月12日(月・祝)13:10--14:10 |
|
東京大学大学院数理科学研究科 NISSAY Lecture Hall |
Abstract
20世紀の力学系理論における主要な発見の一つは,決定論的システムがランダムなふるまいを示しうるという点である.この講演では,滑らかな力学系のランダム性の度合いを測るために用いられる諸性質の間にある相互関係について,現在分かっていることと分かっていないことを概説する.定性的な側面としては,エルゴード性,混合性,$K$性,ベルヌーイ性が挙げられ,定量的側面としては,相関の減衰,大偏差原理,中心極限定理が挙げられる.我々は2つの剛性結果について述べる.1つ目は正のエントロピーを持つ斉次系に対するベルヌーイ性であり,これはダニ(Dani)の予想を解決するものである.2つ目は,滑らかな測度保存微分同相写像において,指数的混合がベルヌーイ性を意味するという定理である.両者の場合について,オルンシュタイン=ヴァイスの手法および不安定葉の等分布性に基づく,背後の幾何学的機構を解説する.次に柔軟性の側面に目を向ける.一般化された$(T,T^{-1})$変換を用いることで,古典的な中心極限定理を満たしながらエントロピーがゼロである滑らかな系や,$K$系であるがベルヌーイ系ではない例,さらに任意に速い多項式速度で混合するにもかかわらずベルヌーイ系でない例を構成する.あわせて数多くの未解決問題も紹介する.