第24回高木レクチャー招待講演
2019年12月8日(日)
11:55--12:55,15:45--16:45
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構


リーマン幾何と相対論におけるスカラー曲率
Richard Schoen
(University of California, Irvine)


Abstract

この論説では非負スカラー曲率を持つリーマン多様体の幾何学に焦点をあてる。 このテーマの研究には、一般相対性理論の視点からと純粋なリーマン幾何の視点からの動機付けがある。一般相対性理論では、そのような多様体は物理的に適切な時空内の空間的超曲面として自然に現れる。そうした状況ではこのクラスの多様体に対する幾何学的な定理の動機となる物理的なアイデアがある。 この論説では、特に重力的質量とエネルギーに関係したアイデアに注目する。 一般次元での正質量定理とその体積最小の超曲面の特異点の関係が一つの焦点である。 また、定スカラー曲率計量の空間のコンパクト性の問題、アインシュタイン方程式の静的真空解としてのシュワルツシルト解の一意性、地平の面積と総質量を関連付けるペンローズ不等式といった諸問題への正質量定理の応用についても論じる。 純粋にリーマン幾何の視点からは非負スカラー曲率を持つ多様体について局所的および大域的に研究することは自然なことである。相対論での局所的なアイデアとリーマン幾何学での多面体的比較定理とを比較して論じる。