第23回高木レクチャー招待講演
2019年6月8日(土)
10:05--11:05,14:00--15:00
京都大学数理解析研究所大講義室420号室


情報幾何学
甘利俊一
(東京大学名誉教授・理化学研究所栄誉研究員)


Abstract

情報幾何は確率分布族の空間の不変な構造の研究から生まれた。2階の対称テンソル$g$と3階の対称テンソル$T$が不変な構造として一意に定まる。$(g, T)$の対から、リーマン計量と合わせてこれを保存する双対アファイン接続が得られる。情報幾何は双対接続を持つリーマン幾何を研究する。これは、非対称ダイバージェンスやアファイン微分幾何学からも得られる。双対平坦なリーマン空間は豊かな構造を持ち、拡張ピタゴラスの定理や射影定理が成立するため、応用上有用である。Wasserstein距離は、不変ではないものの、サンプル空間の計量に依存する独自の構造を持つ。ここでは、エントロピーで規制したWasserstein距離の情報幾何の建設を試みる。