Japan. J. Math. 1, 137--261 (2006)

有限W代数 vs アファインW代数

Alberto De Sole and Victor G. Kac

Abstract: セクション1では頂点代数$V$の各種の同値な定義を復習する.ここでの新規な点は$\lambda$ブラケットの不定積分による定義である.セクション2ではもっとも一般的な枠組みで,ジュー代数$Zhu_{\Gamma}V$を定義する.これは,ハミルトニアン$H$の与えられた頂点代数$V$に対し$\Gamma$-ねじれ表現をコントロールする結合的代数である.この構成の重要な特別な場合は$H$ねじれジュー代数$Zhu_H V$である.セクション3では非線形リー共形代数および非線形リー代数の理論を復習する.その普遍包絡頂点代数および普遍包絡代数はそれぞれ,自由生成頂点代数およびPBW生成結合代数の重要なクラスをなす.さらに非線形リー共形代数$R$の$H$-ねじれジュー非線形リー代数$Zhu_H R$を導入し,その普遍包絡代数が,$R$の普遍包絡頂点代数の$H$-ねじれジュー代数に同型であることを証明する.セクション4での,あとで必要になるコホモロジー的内容の議論のあと,セクション5では,量子ハミルトニアン還元の方法によるアファインおよび有限$W$代数の構成と基本的性質を復習する.これらは,最もよく研究されている自由生成頂点代数とPBW生成結合的代数の例の一部である.セクション3, 4で発展させた仕組みを用いて,アファイン$W$代数の$H$-ねじれジュー代数は同じデータに対応する有限$W$代数に同型であることを示す.セクション6ではポアソン頂点代数のジュー代数を定義し,その準古典極限を議論する.付録では,有限$W$代数の三つの定義の同値性を確立する.