彌永昌吉
Abstract:
この論説はクロード・シュヴァレーの類体論への寄与を解説するものである.
この主題についての彼の中心的な関心事は,彼が研究活動にまさに入ろうとするときに
打ち立てられた高木−アルティンの類体論に「算術的な証明」を与え,
その傑出した調和の本性を解き明かそうとするところにあったと思われる.
ここで扱う彼の中心的な成
果は,局所類体論の大域的な理論によらない最初の算術的な証明,
大域的類体論の算術化,および,イデールの導入による類体論の無限次拡大への一般化
とその記述様式を整えたことであろう.
イデールは現在では代数的数論の一種の自然言語となっている.
この論説では,一方で数学的に厳正な記述を心がけた.
他方,証明はまったく与えなかったが,重要な概念を多様に産みだし,
類体論として結実させ,シュヴァレーを引き込んでその目覚ましく影響力に富んだ
諸業績を生ましめた一連の数学的なアイデアの展開を開示するように努めた.