Japan. J. Math. 2, 229--260 (2007)

平均場ゲーム

J.-M. Lasry and P.-L. Lions

Abstract: 本論説において,統計力学や物理学との類似でわれわれが 平均場モデルと呼ぶところの最近の研究について解説する.より正確には, 経済あるいはファイナンス(あるいは関連した他の分野)におけるモデル化 への平均場アプローチの三つの例を採り上げてみる.概説すれば,極めて 多数の理性的な参加者より行われているゲームで,さらに,そのゲームに 関する情報(可視性)が参加者にとって限られているという状況を考える. それぞれの参加者は,与えらている全体的(巨視的)情報に基づいて,最適な 選択肢を選ぶとする.本論説における三つの例において,非線形偏微分方程式 からなる平均場問題が導かれる.これらの方程式は新しいタイプのものであり, ここでの目標はこれらの方程式を研究し,解析学の諸分野と関連付けることで ある.特に,ここでの非線形問題が本質的に適切であること,すなわち,これら の問題は一意解を持つことを示す.さらに,種々の極限問題,例,一般化につい て述べ,そして多くの未解決問題に触れる.