倉田博史(東京大学大学院情報学環・学際情報学府)
 
Euclid 距離行列の順序構造について
 
Euclid 距離行列(Euclidean distance matrix)の順序構造に関する幾つかの事実を導出する。p 次元空間に n 個の点が与えられたとき、各点間の距離を n×n非負対称行列の形で表現出来ることは明らかである。この逆が成立するとき、すなわち、n×n 非負対称行列が与えられたときに、それを相互距離として持つ n 個の点が適当な次元の Euclid 空間に存在するとき、その非負対称行列を Euclid 距離行列呼ぶ。統計学では、多次元尺度構成法などで用いられる概念である。 本研究では、Euclid 距離行列の空間に置換行列群によって誘導される順序を定義し、その構造を調べる。具体的には、Euclid 距離行列がこの順序の意味で大となると、
 (1) 対応する点配置が作る超球面の半径が大となる、
 (2) Euclid 距離行列の固有値の散らばりが(マジョライゼーションの意味で)大となる、
 (3) 対応する点配置の spherical variance が大となる
などの不等式を導く。