量子可解模型

量子可解模型を研究対象としています.スピン鎖や共形場理論,可解確率過程といった関連分野にも興味があります.量子可解模型に対する明確な定義はありませんが,ここでは多粒子系における散乱が二体散乱に分解できるとき,その量子系は可解であると言うことにします.多体散乱の二体散乱への分解可能性はYang-Baxter方程式によって保証されます.Yang-Baxter方程式は量子群の枠組みで理解することができ,そのため代数関係式を用いて物理量を厳密に計算することが可能です.量子可積分系の最も有名な例は異方性を持つハイゼンベルグスピン鎖で,XXZ模型と呼ばれています.


高次スピン鎖の相関関数

電子スピンは+1/2あるいは-1/2を取りますが,鉄錯体のような化合物ではより高次なスピン値が現れることがあります.このような化合物に対応するスピンを一次元に配置した系を高次スピン鎖と呼ぶことにします.高次スピン鎖に特殊な形の相互作用項を入れると,可積分系となることが知られています.可積分な場合では,高次スピン模型はUq(sl2)代数の高次元表現から構成され,量子逆散乱法が適用できます.量子逆散乱法では,物理量や固有状態をモノドロミー行列の要素で表すことができます.相関関数が局所演算子の期待値で与えられる一方,モノドロミー行列要素はスピン鎖全体に作用します.モノドロミー行列要素が満たす代数関係式はYang-Baxter方程式から導かれ,それを用いて相関関数が計算できます.

量子場の理論とスピン鎖との対応

量子場の理論における散乱過程は,光円錐を離散化することによりスピン鎖の転送行列で記述することができます.場の理論に対応するスピン鎖における転送行列を構成する際の技術的な問題により,場の理論の一部の励起状態は周期的スピン鎖からは構成できないことが知られていました.例えば,スピン1のXXZ模型に対応する場の理論は超対称なサイン・ゴルドン模型であるが,光円錐離散化の方法で記述できるのはNeveu-Schwarz (NS) セクターにおける偶数粒子励起のみです.しかしながら,スピン鎖に適当な境界磁場を与えると,対応する場の理論として超対称なサイン・ゴルドン模型のRamond (R) セクターの導出が可能です (図1).

sector separation

図1. 紫外極限におけるセクター分離 (NS: Neveu-Schwarz, R: Ramond).



可解確率過程

非対称単純排他過程 (ASEP) は離散空間・連続時間上で定義される一次元確率過程です.このモデルの時間発展はTemperley-Lieb代数を満たすマルコフ行列を持つマスター方程式に従い,可解性を満たします.


非対称単純排他過程の多状態拡張

マルコフ行列が持つ数学的性質に基づき,ASEPの様々な代数的拡張が考えられます.二粒子以上に同じサイトの占有を許す多状態への拡張は,Temperley-Lieb代数の高次元表現により実現されます.可解性を保つため,一般に遷移率は非常に複雑な形を取りますが,完全非対称極限では同時に遷移する粒子数のみに依存する独立パラメータへと単純化されます (図2).

hopping rates

図2. 多状態完全非対称排他過程における遷移率.





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