東京大学 / 数理科学研究科 / 講義

数学I (Aコース)+演習
(2007年4月〜2008年1月)

夏学期

1. 実数の連続性と数列の極限:高校では実数列の収束を感覚的に把握したが,ここでは「実数の連続性」を説明し,それに基づいて数列の収束や極限の概念をより正確にとらえる.これによって種々の数列や級数が収束する条件が明らかとなる.またこの定式化により,「連続関数に関する中間値の定理」や「連続関数が有限閉区間で最大値・最小値をもつこと」などの性質が自然に導かれることを見る.

2. 1変数の微分:1で定義した概念に基づいて1変数の関数の微分を正確に定義し,その基本的な性質を論じる.初等関数(指数関数・三角関数)の微分,合成関数・逆関数の微分,関数の増減,平均値の定理,2階微分と凸性,高階の微分,テーラーの定理,テーラー展開(関数のベキ級数による表示)を中心に学ぶ.また接線などの幾何学的概念や,速度や加速度といった物理量との関連にも触れる.

3. 多変数の微分:2変数の場合を中心に,多変数の関数の偏微分と合成関数の微分,およびその応用を学ぶ.特に全微分の定義とその可能性,偏微分の順序交換,多変数関数のテーラー展開や極大・極小問題,曲面の接平面などについて考える.

冬学期

4. 1変数関数の積分:密度分布から全体の量を求める方法(区分求積法)である定積分の性質を論じる.定積分を行なう区間の端点を動かすことによって不定積分を導入し, 「不定積分はもとの関数の原始関数である」という微分積分学の基本定理を得る.不定積分の発展として,変数分離型など簡単な微分方程式について,その意味と応用例を考える.積分の計算法(部分積分と置換積分)や具体的計算(指数関数・対数関数・三角関数・逆三角関数・有理関数)にも時間を割く.

5. 多変数関数の積分:2変数の場合を中心に多重積分を扱う,区分求積によって多重積分を定義し,1変数積分の繰り返しによる累次積分として表示する.またヤコビ行列式を用いた変数変換公式(極座標・円筒座標による計算)とその応用(面積・体積・質量など)について論じる.

6. 無限級数と広義積分:ベキ級数など関数列の収束(判定条件,収束半径)や一様収束について学び,極限と微分・積分の順序交換がどのような場合に許されるか考察する.さらに応用上重要な広義積分(無限区間での積分・区間の端で発散する関数の積分)とその応用について論じる.