東京大学 / 数理科学研究科 / Home


複素解析学 II+演習(2001年4月開講)

Last updated June 26, 2001

担当 平地健吾 TA 稲葉昭、滝本和広

このページでは数学科3年生向けの複素解析学 IIの講義情報をのせます(ほとんどは自分用のメモです)。

演習問題はこちらです。

7月17日の予定

午前中は期末試験(自筆ノートのみ持ち込み可)
午後は Mittag-Leffler の定理とその周辺について講義

7月10日の予定

分岐点の構造
モジュラー函数 λを用いたピカールの(小)定理の証明

7月3日は休講

韓国でのワークショップKSCV5 に参加します。

6月29日の講義

曲線に沿った解析接続から直接解析接続の列としての解析接続を構成する方法を説明。
モノドロミー定理の証明を与えた。
定数でない整関数の逆函数として大域的解析函数が定義されることを証明。 これで Log z, √z などが解析函数として定義されることがわかる。
穴のあいた円での閉曲線のホモトピー類が回転数で特徴付けられることをモノドロミー定理を用いて証明。

6月12日の講義

前層から層( = 層空間 = 先週定義した位相空間としての層)を構成する方法を説明。
曲線に沿った解析接続を定義し、その一意性を証明。
ホモトピー同値の定義を与え、モノドロミー定理を述べた(証明は来週)。

6月12日の講義

Weierstrass による解析接続の理論。関数要素の直接解析接続の列として解析接続を定義しWeierstrass の意味での 解析関数の定義を与えた。

アーベル群の層の一般的な定義のあと、正則関数の芽の層を定義し、その連結成分として 大域的解析関数を定義した。この解析関数は上記の Weierstrass の意味での 解析関数と同じものであることを証明した。

6月5日の講義

モジュラー関数λのΓ(2)の不変性を証明。 Γ(2) の基本領域の半分がλによって上半平面に双正則移されることを証明した。

5月29日の講義

ペー関数のみたす微分方程式を導きぺー関数が楕円積分の逆関数であることを説明した。
その表示を用いて楕円モジュラー関数を定義しそのΓ(2)に関する不変性を述べた。 その証明は簡単だが来週に先送りして、今週はΓ(2)の説明のために SL2(Z) と楕円曲線のモジュライ空間の話しをした。

モジュラー群に関する事実を述べたがこれらの証明は例えば Ahlfors の教科書にあるので興味がある人は見て下さい。 もう少し詳しく勉強したい人には昨年出版された
  梅村浩「楕円関数 楕円曲線の解析学」東大出版会
をお勧めします(数理図書では平地が貸出中)。

5月22日の講義の予定

周期加群の定義、単周期関数のフーリエ展開、楕円積分を用いた Jacobiの楕円関数の定義
離散加群の基底は高々2であることの証明
楕円関数の性質(正則なら定数;基本領域上の留数の和は0;次数の定義;次数は2以上)
ぺー関数の級数による定義、その収束性の証明。

5月15日の講義

多重連結領域は円環からいくつかの同心円弧を除いた領域と双正則同値になることを証明した。
証明は基本的には Ahlfors の教科書に沿ったが、主値積分を用いた議論は位相幾何的な 議論で置き換えた。 調和測度については、測度論の知識が必要なので、特別の場合だけを扱った。

5月1日の講義(来週休講のため午前、午後の二回)

調和函数、ディリクレ問題のペロンによる解法(劣調和函数)
グリーン関数の定義とリーマン写像との関係

4月24日の講義

双正則写像の境界挙動(ジョルダン領域の間の双正則写像は境界まで同相に拡張できることの証明)
今回紹介した証明は吉田洋一「函数論」岩波全書を参考にしています。証明を省いたジョルダン曲線に関する補題の証明は M. Newman: Topology of Plane Sets of Points (数理図書に有り)に載っているそうです(私は読んでいないので伝言風)。Jordan の定理なども証明している函数論の本としてはR. Burckel: An Introduction to Classical Complex Analysis があります。これは辞書のような本です。
シュワルツ・クリストッフェルの公式
(証明を与えるはずだったが、時間不足で後半を省略;偏角をまじめに計算するだけなので絵を描いてじっくり考えてみるのがよい)

4月17日の講義

正規族(有理型関数とリーマン球面の復習も含む;例えばリーマン曲面上の距離、射影空間など)
思いがけず時間がかかってしまった。証明を省いた部分は、例えば Ahlfors の教科書の6章5節を見て下さい。

4月10日の講義についてのコメント

等角写像と正則写像の関係
等角と正則の同値性の証明で全微分が0でないからといって局所的に単射とは言えない ので等角性が定義できない、という指摘がありました。そのとうりです。 本当は「有限個のθを除いて等角性が成り立てば、局所的に単射となり、その結果として すべてのθで等角になる」という推論が必要です。詳しいことが知りたい人は Rudin の教科書の 等角写像の項を参照してください。
リーマンの写像定理(正規族についての議論は来週へ)
写像の存在の証明は途中で関数列の部分列をとるという操作がはいるので、実際の計算には 使えません。写像を具体的に構成する証明方法としては Koebe の方法(例えば Rudin の教科書14章の問題26) があります。この他にも調和関数(グリーン関数)や、ベルグマン核などを用いた証明もあります。
このページに関する質問、訂正は平地まで。