講演要旨
 伊藤 敏和
  1881年から82年にかけてH.Poincaréは論文“Sur les courbes définies par une équation différentielle” で常微分方程式の解の定性的性質の研究を始め,現在では Poincaré-Hopfの指数定理,Poincaré-Bendixsonの定理(limit cycleの存在定理)と呼ばれる定理について論じている。 一方でPoincaréは1870年代後半には複素時間の複素微分方程式の正則解の存在や特異点における線形化について研究している。
 Poincaré-Bendixsonの定理は実n次元空間Rn, n≧3, では成り立たないことが知られていた(Lorentzアトラクターなど)が,複素n次元空間Cn, n≧2, 上の正則微分方程式に対して, 1993年にA.Douadyと講演者によりPoincaré-Bendixson 型定理が成り立つことが発見された。 この講義ではこのことにまつわる話をしたい。 そして,これを積分可能な正則 1-形式(余次元 1 正則葉層構造)に拡張しようとしたときどのような結果が得られ,どのような疑問や問題が生じるか解説したい。

 河澄 響矢
  多様体のベクトル場全体のつくるリー代数の(連続)コホモロジーがゲルファントフクスコホモロジーである。 Bott-Segal および Haefliger によってすでに、微分可能多様体の(自明係数)ゲルファントフクスコホモロジーはあるバンドルの切断の空間の特異コホモロジーとして完全に記述されている。 しかし、ここでは、テンソル場に係数をもつねじれ係数のものも含め実および複素一次元の場合に、具体的かつ初等的な計算を実演する。

 足助 太郎
  横断的に複素解析的な葉層構造に対して特性類という量が定まる。 特に(複素)二次特性類と呼ばれるものは重要だが,一般にはその性質を調べるのは多くの困難が伴う。 ここでは定義がそれほど難しくなく,研究が比較的進んでいる複素余次元1の場合について定義から始めて,今までに知られている結果や未解決問題をいくつか紹介する予定である。
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