講義を終えて

2001年度幾何学A演習

 本演習は前半は講義にほぼ沿う形で行い、後半はR^2のベクトル場と微分形式を
主に扱った。演習の形式としては、問題を配布しそれを適宜黒板で解いてもらうという
形を採った。曲線・曲面論に現れる計算は原理的には単純なものが多いが、実際の
例に適用すると非常に複雑になり、事実上不可能になることが少なくない。本演習に
おいては、計算が出来る場合には最後まできちんとそれを完結させること、そうでな
い多くの例では計算が非常に大変になることが意識されることを主眼に問題を出した
つもりである。当初想像していたよりも意欲的に問題に取り組む学生が多かったのは
よかったが、残念なのは、例えば「計算は途中までしかできない」というのがあるべき
解答になるような問題に対したとき、自信を持って計算を途中で打ち切れる学生がほ
とんど見られなかったことである。あまりに根拠の無い自信を持つのは考え物である
が、どこかで自分の責任で物を言い切るということも大事である。
 また、演習の時間中に何度も述べたが、例えば証明を書くときにはきちんと日本語
として(場合によっては英語等でも構わないが)意味の通る文章を書くといったことや、
あるいはしかるべき体裁を備えたレポートを書くといったことは本当のところ大学以前の
問題である。せめて大学を卒業するまでには、うまいへたはともかく、意味の通る文
章を他人にも読めるような形式で書けるようになって欲しい。そのためには数学に限
らず文章を多く読むことが必要である。もちろんそれらの文章には悪い点や誤りが多
く含まれる。それを見分ける目は多くの文章、数学に限って言えば多くの数学に触れ
ることのみで養われる。
 今回の演習では、特に後半においては佐伯先生の講義内容には必ずしも忠実には
沿わずに題材を選んだ。これはベクトル場・微分形式は非常に大事なもので、しかも
理解に時間がかかりがちであるという理由による。今回の演習ではこれらが理解で
きなかった者は、あせらずにもう半年かけてこれらを理解して欲しい(ベクトル場・微分
形式はおそらく後期の多様体に関する講義でも扱われる)。念のために述べておくと、
演習であまり扱わなかったからと言って佐伯先生の講義で行われたことは大事では
ないということでは決してない。理解が不十分だと感じた学生は自習(必ずしも独習と
いう意味ではない)して欲しい。
 なお、過去の演習問題を入手したい場合には演習のページから適宜リンクを辿ればよい。
必要であれば私に直接連絡を取っていただいても構わない。
 URLは変更になる場合があるので、その際にはトップページからリンクを辿ること。
小冊子「講義を終えて」に掲載のものを一部改変の上転載

演習のページへ戻る