野口潤次郎 氏 (東京大学大学院数理科学研究科)
『 値分布と多変数関数論 』

内容:
解析関数を調べる研究が、特別な解析関数を個々に調べることから解析性を持つ関数を一般に調べる理論に独立した転機をなしたのは「ピカールの定理」であると言われている。自然に解析関数論は、一変数から多変数を扱うようになる。そして多変数関数論は岡潔により基礎が完成された。最も本質的な性質は「連接性」であることが岡により見抜かれ「岡の3連接定理」が証明された。その後の進展・整理は素早く、1950年代には「岡-カルタン理論」として確立された。
一方、ピカールの定理はネヴァンリンナにより定量的な値分布論へと発展した。高次元値分布を展開しようとすると多変数関数論の基礎が必要になってくる。その基礎的な部分はW. Stollがやった。私が研究に参加し始めたのは1972年頃で、GriffithsーKingのActa論文や小林双曲的多様体の理論が広まり始めた時期であった。その頃に考え始めた問題がどのように進展し、解決したもの、未解決問題、出てきた問題について考えてみたい。