数理科学研究科長
坪井 俊
東京大学大学院数理科学研究科は、東京大学駒場Iキャンパスに所在する独立研究科で、東京大学における数学・数理科学の教育研究を担う組織です。
数理科学研究科は、大学院においての数学・数理科学の教育はもとより、大学前期課程教養学部1・2年生)の数学教育、後期課程の理学部数学科および教養学部統合自然科学科数理自然科学コースの数学教育を担当しています。すなわち、本研究科は、大学院のみならず、東京大学における数学教育(講義、演習及び研究指導)を全面的に担っております。
大学院の定員は修士課程各学年53名(うち外国人留学生6名)、博士課程各学年32名(うち外国人留学生3名)となっており、学生は留学生が多数いる国際的で自由な雰囲気のもと、世界屈指の数学図書館や整備された計算情報ネットワークなどをもつ充実した環境の中で研究を行っています。大学院修了者は、大学、研究所、官公庁、情報、金融保険、製造、教育等の多くの領域で活躍しています。大学後期課程および大学院では、代数・幾何・解析から応用数理まで数理科学諸分野においてきめ細やかな教育を行っておりますが、2005年以降、特にアクチュアリー、統計、社会数理の講義も充実させ、社会で必要とされる数理の実務に直結した人材育成も行っています。
2012年4月現在、大学院数理科学研究科は6大講座に、教授29、准教授26、助教5の常勤教員ポストを有し、教育研究活動を行っています。このほか、連携客員講座に教授6、外国人客員講座に教授1のポストを有し、社会との連携、国際交流に努めております。本研究科のスタッフは先端的な研究に従事し、国際的に活躍しております。本研究科では、多くの国際会議、セミナー等を開催しており、共同研究や研究交流のために、海外から毎年150名以上の研究者をビジターとして受け入れており、国際的な数学研究拠点と評価されています。
2005年度には群馬県に東京大学国際セミナーハウスが設置され、本研究科が管理する施設として運営され、数理科学の研究教育活動、社会連携活動に有効に活用されております。また、東京大学国際高等研究所の最初の研究機構となったカブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli-IPMU)とは、教員の密接な交流を含め、強力な連携研究体制をとっています。Kavli-IPMUは、2007年10月に文部科学省世界トップレベル国際研究拠点(WPI)の1つとして生まれたものですが、設立4年にして国際的に非常に高い評価を受けています。数理科学研究科では、さらに公開講座やオープンキャンパス、ウェブページ、ビデオアーカイブ等により、社会へ数学・数理科学の教育情報・研究情報を世界に提供しています。
数学は森羅万象の背後にひそむ数理的構造に光をあて、その本質を解き明かすことを目指す学問です。あらゆる学問の中で最も早くから体系化が進み、今も絶えず発展を続けています。数学は抽象性と普遍性、及び発想の自由性を特色とし、極めて多様なテーマを扱います。それらが有機的に繋がって壮大な体系を築きあげており、また、その成果が科学技術、学問諸分野の基礎として役立っています。
数理科学研究科は、この数学・数理科学の教育研究組織であります。本研究科は、「数学・数理科学に関する体系的な知識と高度な研究能力を修得し、数学・数理科学の諸分野において、第一線で活躍する研究者、ならびに数学・数理科学の幅広い素養と広い視野から専門的な判断力を身につけ、社会の広範な領域で新しい時代を担い、国際的に活躍できる創意ある人材を育成すること」を教育の目的としております。また、「基礎的で重要な問題の探求はもとより、新たな研究領域を開拓し、国際的な視野に立って高度な数学・数理科学の文化を醸成して社会の発展に資すること」を研究の目的としております。
本研究科は、1992年4月に理学部数学教室、教養学部数学教室、教養学部基礎科学科第一基礎数学教室を合併し、独立大学院として設置されました。おかげさまで、1995年からは、駒場キャンパスの南東の一角に研究科棟を持ち、2012年に設立20周年を迎えました。数理科学研究科教職員一同は上に掲げた目的の達成のために努力を重ねてまいりますので、今後とも皆様のご支援とご指導をお願い申し上げます。
平成24年4月
数理科学研究科長 坪井 俊