東京大学玉原国際セミナーハウス設立の経緯

 大学院数理科学研究科は1992年4月に理学部数学科,教養学部数学教室,教養学 部基礎科学科(数学)の教官を合わせる形で設置された研究科で,東京大学教養学部(大学1,2年生),理学部数学科(3,4年生),教養学部基礎科学科数 理コース(3,4年生),大学院修士課程,大学院後期博士課程の数理科学教育を担うとともに,数理科学研究の広い分野において最先端の研究を行っていま す。

 1995年9月数理科学研究科棟第Ⅰ期工事竣工,1998年6月第Ⅱ期工事竣工により駒場キャンパスにおいての教育研究活動の基盤を確立しました。

 2000年頃から,数理科学の教育研究において,長期集中セミナーの必要とそれを 行う場としてのセミナーハウスの設立を研究科として考えることになりました。このようなセミナーハウスは,国外には各国にあり,特にドイツのオーベルヴォ ルファッハにあるものが有名です。国外にあるセミナーハウスでの教育研究の恩恵を受けてきた当研究科の教員から,セミナーハウスの設立を希望する声が上 がったのでした。

 数理科学研究科ではこのようなセミナーハウスの設立を東京大学内の各方面に働きかけました。
 2003年には数理科学研究科は21世紀COE教育研究拠点の1つに選ばれました。
 2004年4月から東京大学は国立大学法人となりました。2004年秋に数理科学研究科にとって待ち望んでいたセミナーハウス設立の可能性が広がってきました。

 東京大学が財団法人「森林文化協会」から2003年4月より活動を停止していた玉原高原の「朝日の森ロッジ」の譲渡を受け,数理科学研究科がセミナーハウスとして利用するとともに東京大学の施設として管理運営にあたるという提案をいただいたのでした。

 数理科学研究科では,2004年10月16日に現地を調査し,その結果を踏まえて数 理科学の長期集中セミナーの場としての適否を検討し,またセミナーハウスとして健全な運営の可能性を探りました。この結果,2004年12月には,数理科 学研究科として,『東京大学が「朝日の森ロッジ」の譲渡を受け,「東京大学玉原国際セミナーハウスを設立する。東京大学全学の支援のもとでセミナーハウス として使用するために必要な改修をおこない,数理科学研究科がこれを管理運営する』ことを東京大学役員会に要望することを決定しました。

 数理科学研究科のこの提案は東京大学役員会に理解していただき,東京大学としての譲渡の受け入れと改修についての全学の支援が約束されました。
 2005年4月に「朝日の森ロッジ」は,東京大学に譲渡され,5月,6月には「東京大学玉原国際セミナーハウス」として改修工事を行いました。
 2005年7月8日に,「東京大学玉原国際セミナーハウス」は開所式を迎えることとなりました。開所式にいたるまでには,森林文化協会,林野庁森林管理署,沼田市,東京大学施設部など多くの皆様のご支援をいただきました。この場を借りてあつくお礼を申し上げます。

 開所後,2005年度にはすでに多くの数理科学集中セミナーが企画されています。こ の「玉原国際セミナーハウス」はTambara Institute of Mathematical Sciencesとして国際的にも数理科学の情報発信の拠点となってまいります。また,東京大学の教育研究施設,厚生施設としての役割も担ってまいりま す。さらに,「高校生のための現代数学講座」も開催され,東京大学,とくに大学院数理科学研究科の社会連携の拠点としての役割も担ってまいります。

 今後も「東京大学玉原国際セミナーハウス」へのご支援をお願いいたします。