2024年度「数学講究XA」テキスト一覧(解析)
番号 担当教員 開講
学期
テキスト名 著者 出版社 発行年 備考
47 石毛 和弘 教授 通年 Partial Differential Equations: Second Edition Lawrence C. Evans AMS 2010 通年で使用する
偏微分方程式論入門の良書として良く知られ、ソボレフ空間や偏微分方程式の弱解の性質についてもコンパクトに良く纏められている
48 通年 Elliptic Partial Differential Equations of Second Order Gilbarg, David, Trudinger, Neil S Springer 1985 通年で使用する
楕円型偏微分方程式の古典解、弱解、強解、それぞれの正則性理を学ぶことができる良書として有名である。この他、ソボレフ空間論等についても良くまとまって書かれている。
49 河東 泰之 教授 通年 A Course in Functional Analysis John B. Conway Springer 1985  
関数解析の基礎から発展までを論じた本です.説明が丁寧だと思います.後半に作用素環の基礎も少し出てきます.最初の方の内容はすでに知っているという場合は飛ばしても結構です.
50 通年 作用素環論入門 戸松玲治 共立出版 未出版
作用素環論の基礎から論じた新しい教科書の原稿です.関数解析についての基本的な知識が必要です.
51 木田 良才 教授 通年 The Probabilistic Method. 4th ed. N. Alon and J. H. Spencer Wiley 2016  
有限グラフの問題(彩色問題など)に対する確率論的手法を紹介する本。下記サイトに書評あり。
https://doi.org/10.11429/sugaku.0701107
52 通年 Ergodic Theory D. Kerr and H. Li Springer 2017  
可算離散群の作用に関する、近年のエルゴード理論の発展をまとめた本。専門的です。
53 佐々田 槙子
               教授
通年 Probability with Martingales  David Williams Cambridge University Press 1991 通年で使用する
測度論に基づく確率論の基礎から、離散時間マルチンゲールの理論までが、様々な応用例に触れながら
まとめられている。基礎を十分に理解している場合には、マルチンゲールのパート(第9章)から始めてもよい。
54 通年 確率過程入門 西尾眞喜子・樋口保成 培風館 2006 通年で使用する
確率過程に関する様々な話題がコンパクトにまとまっている。
測度論に基づく確率論の基礎については理解していることが望ましい。
55 高山 茂晴 教授 通年 Differential analysis on complex manifolds, Springer GTM 65 R. O. Wells Springer 2007 通年で使用する予定。代数・幾何・解析の分野の交わりに興味がある者を歓迎する。Griffiths -
Harris著 「Principles of Algebraic Geometry」の第0章と第1章(200ページ程度)に変更も可能。
コンパクトな複素多様体の標準的な教科書として良く知られている。前半では、層とコホモロジー、エルミートベクトル束、楕円型作用素などの基本的事項が説明されている。後半では特にケーラー多様体の場合の調和積分論、ホッジ・小平の分解定理などが詳しく説明され、それらを用いて小平消滅定理、小平埋込み定理の証明が与えられている。3年生の知識があれば十分に読み進むことができる。
56 通年 新装版 複素代数幾何入門 堀川穎二 岩波書店 2015 通年で使用する予定。解析・代数・幾何の分野の交わりに興味がある者を歓迎する。
複素解析的な立場から書かれた代数幾何学の入門書である。多変数複素解析からの準備、複素多様体、解析的集合・代数的集合、層とコホモロジーなどの基本的事項を学び、後半のリーマン面と代数曲線、複素曲面の章において前述の基礎理論の適用しながら代数幾何の考え方を学ぶ。
57 平地 健吾 教授 通年 Holomorphic Functions and Integral Representations in Several Complex Variables Michael Range Springer 1986 通年で使用する
多変数複素解析学の標準的な教科書の一つ.1変数の複素解析ではコーシーの積分表示が主役ですが,それを多変数の場合に一般化して正則関数を調べます..
58 宮本 安人 教授 通年 Partial Differential Equations: Second Edition Lawrence C. Evans American Mathematical Society 2010 通年
偏微分方程式の入門書として世界的に用いられている教科書.偏微分方程式の基本的性質や関数解析の初歩,発展方程式や変分法等,全般的に記述されている.
700ページ以上あり通読するのは難しいので,相談して読むところを決めたい(読みたいところから始めて構わない)
59 通年 関数解析 藤田宏,
黒田成俊,
伊藤清三
岩波書店 1991 通年
日本語で書かれた関数解析の代表的な教科書.偏微分方程式への応用を念頭においた関数解析における重要な定理を全て網羅していると言って良い.最後の方に楕円型作用素に関する固有値や固有関数展開など応用についても少し触れられている.こちらも500ページ以上あり,通読するのは難しいので,どこを読むかは相談のうえ決めたい.
60 伊藤 健一 准教授 通年 多体シュレーディンガー方程式 磯崎 洋 丸善出版 2004  
シュレーディンガー方程式の多体散乱理論への入門書.基本的な関数解析の知識があれば読み進められるように構成されている.また第2章までに2体問題に対する一通りの取り扱いが解説されており,強力な手法であるMourre理論について学ぶこともできる.
61 通年 An Introduction to Semiclassical and Microlocal Analysis André Martinez Springer 2002
2011
2013
ハードカバー,ソフトカバー,電子版あり
半古典解析および超局所解析(擬微分作用素)への入門書.プランク定数をパラメータとして,0への極限をとると量子論から古典論が浮かび上がってくる.その様子を数学的に解析する.
62 岩木 耕平 准教授 通年 特異摂動の代数解析学
https://www.iwanami.co.jp/book/b265797.html
河合隆裕、
竹井義次
岩波書店 2008 通年で使用。
一般に摂動項をもつ微分方程式の級数解がもつ「発散の困難」の背後には実に深い数学的構造がある。Borel 総和法の観点から眺めると、それは方程式の大域的性質と密接に関係している。本書では Schrodinger 方程式を題材に、「完全WKB解析」の理論、およびモノドロミー保存変形や非線形パンルヴェ方程式に対する応用などが解説されている。
63 通年 Divergent Series, Summability and Resurgence I — Monodromy and Resurgence  (Lecture Notes in Mathematics, volume 2153)
https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-319-28736-2
Claude Mitschi ,  David Sauzin Springer 2016 後半部分の「Introduction to 1-Summability and Resurgence」を通年で使用。
近年理論物理において、発散級数に対する Borel 総和法や resurgence 理論が活発に応用されている。本書は数学者の視点から書かれた resurgence 理論の入門書である。
64 坂井 秀隆 准教授 通年 Topics in complex function theory Volume I  C. L. Siegel Wiley-Interscience 1969 受講生の希望に応じて他のテキストを使用することもある.
複素解析の応用として楕円函数や代数函数などを扱った古典的名著.
65 通年 微分方程式とモジュライ空間 広恵一希 サイエンス社 2022 受講生の希望に応じて他のテキストを使用することもある.
フックス型微分方程式のモジュライ空間を箙(quiver)の表現を使って実現するクローリーボーヴェイの理論についての解説.前提となる数学概念の解説にも詳しい.
66 下村 明洋 
                准教授
通年 ユークリッド空間上のフーリエ解析I
                                 (朝倉数学大系 13)
宮地晶彦 朝倉書店 2021 通年で使用する.
実解析の基本的話題について学ぶ.この本の前半部分では,実解析で必要となるフーリエ変換の解説(第1章と第2章)から始まり,実関数論の基本的話題である特異積分作用素のL^p理論とフーリエ掛け算作用素のL^p有界性等(第3章)について解説されている.このセミナーでは,特異積分作用素のL^p理論(第3章の内容)を理解する事を主な目標とする.学部3年のルベーグ積分論とフーリエ解析の続きに位置付けられ,関数解析の素養も多少必要である.
67 関口 英子 准教授
               
通年 リー群と表現論 小林俊行--
大島利雄
岩波書店 2016
(第 10 刷)
通年で使用します.
リー群と表現論に関する本格的な教科書です.数多くある代数的な表現論の本と異なり,幾何および解析的な考え方も重視して書かれています.
前半ではフーリエ級数論を拡張して,非可換なコンパクト群の表現論が扱われ,続いて古典群の既約表現の分類理論がリー環論に依存せず鮮やかに証明されます.
後半ではファイバー束と群作用や幾何的な表現の構成が有限次元・無限次元のいずれに対しても順を追って詳しく説明されています.深い洞察によって,本質的なことを掘り下げた名著です.
68 通年 Harmonic analysis in phase space Gerald B. Folland Annals of Mathematics Studies, 122. Princeton University Press 1989 通年で使用します.
R^n上の二乗可積分関数のなすヒルベルト空間には, フーリエ変換をはじめ,重要なユニタリ作用素がたくさんあり, それらの総体は非常に大きな対称性 (ヴェイユ表現, シュレーディンガー表現) として捉える事ができる.この対称性は, フーリエ解析, 偏微分方程式, 無限次元表現論, 数理物理, 保型形式の整数論の基礎としても用いられる.  本書の前半では擬微分方程式を Weyl calculus の立場で「隠れた対称性」を明示しながら解説し,Kohn-Nirenbergの流儀との関係を説く.
後半ではヴェイユ表現についての入門的解説がなされている.関数解析やフーリエ解析を基本的な手法としており, 3 年生の必修科目,特に, 解析系の科目のすべてと多様体論を理解していることが予備知識として
必要である.
69 高田 了 准教授 通年 Fourier Analysis and Nonlinear Partial Differential Equations Hajer Bahouri,
Jean-Yves Chemin,
Raphaël Danchin
Springer 2011 通年で使用する
実解析学と偏微分方程式に関する入門書です.特に,Littlewood-Paley理論とBesov空間論,および流体力学に現れる非線形偏微分方程式の数学解析に関して解説されています.
70 通年 Nonlinear Partial Differential Equations: Asymptotic Behavior of Solutions and Self-Similar Solutions Mi-Ho Giga,
Yoshikazu Giga,
Jürgen Saal
Birkhäuser 2010 通年で使用する
非線形偏微分方程式に関する入門書です.特に,非線形偏微分方程式の解の漸近挙動解析や,微分積分学における様々な関数不等式に関する内容が詳細に解説されています.
71 三竹 大寿 准教授 通年 Hamilton-Jacobi Equations: Theory and Applications  Hung Vinh Tran American Mathematical Society  2021  
本書では,最適制御理論で重要な役割を果たすハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式について学びます.この方程式の解を体系的に解析したい場合に,標準的な道具として粘性解理論があります.この粘性解理論は,楕円型,放物型偏微分方程式に対する弱解で,1980年代初頭にCrandallとLionsによって導入されました.特に,非発散型の楕円型,放物型偏微分方程式にも有効であることは特徴的で,その応用例は従来の楕円型,放物型方程式に加えて,制御問題や界面運動に現れる非線形偏微分方程式と多くにわたります.本書は,従来の粘性解の一般論(存在,一意性,安定性)について学ぶことができ,さらに近年発展したAubry-Mather理論,弱KAM理論と,その応用としての漸近問題について体系的に学ぶことができる専門書です.
72 通年 Surface Evolution Equations Yoshikazu Giga Birkhauser 2006  
本書では,曲面の運動方程式を偏微分方程式の立場から解析する方法について学ぶことができます.曲面の運動方程式を等高面の方法を通して解析しようとすると,退化放物型,楕円型方程式に分類される非線形偏微分方程式が現れます.これらの偏微分方程式を体系的に解析するには,粘性解と呼ばれる偏微分方程式の弱解理論が大変便利です.粘性解理論は,このような曲面の運動方程式だけでなく,制御工学,最適制御理論を通して,経済理論においても重要なツールとして認知されています.本書を通して,粘性解理論の基礎について学びたいと思います.