2021年度公開講座

東京大学大学院数理科学研究科
数物フロンティア国際卓越大学院

2021年度公開講座「p進数」

本年度は新型コロナウィルスの感染防止のため、配信形式(オンデマンド型)で開催しました。

配信期間:2021年11月21日(日) 9:00 より駒場祭期間中公開されます
※公開終了後、数理ビデオアーカイブで視聴できます

講師:志甫淳,阿部紀行,今井直毅

*視聴無料。事前登録不要。

研究科長挨拶  東京大学大学院数理科学研究科長 時弘哲治

私たちが生まれて最初に使う数学は,個数を数えることではないでしょうか.
1,2,3...という数字は,個数を区別する記号ですが,足したり引いたり掛けたりすることができ,私たちはその結果を買い物などの日常の生活の場面で役立てています.このような 1,2,3...という数えられる数は自然数と呼ばれます.小学校では自然数に加えて 0 や分数も学び,さらには中学校で負の数を含めた整数を学びます. 数の概念はさらに一般化され,有理数,実数,さらには虚数を含んだ複素数の体系にまで拡張できます. 複素数はここに挙げたすべての数を含んだ体系で,原子や素粒子の世界を記述するためになくてはならない数です.
このように数の概念を体系化しその性質を調べる数学を「数論」と呼びます.数論は数学の女王と呼ばれたこともある数学の分野です.
今回の公開講座のテーマは数論に関するものであり,皆さんになじみのあるこれらの数とはまた別の,歴史的にはより新しい数の概念である「p進数」です.実数の場合,小数点以下の数字が無限に続くものを考えていますが,p進数では,逆に小数点以上の数が無限に続くものを考えていると言っても良いと思います.通常は自然数を1,2,3...と並べるとその大きさはどんどん大きくなりますが,p進数の世界で大きさを考えると大きくなってはいきません.
こうした不思議なp進数の世界について,数論分野の第一人者の数学者3名の方に,わかりやすく講演していただきます.コロナ禍のため,昨年に引き続きオンラインでの開催となりましたが,どの講演も臨場感にあふれるとても興味深いものです.
不思議な数の世界を楽しみ,また,数学の自由さと創造する面白さを感じていただければ,たいへん幸いです.

講義1:『合同式』 志甫淳(東京大学大学院数理科学研究科)

「奇数と奇数を足すと偶数になる」,あるいは「金曜日の3日後は月曜日である」といったことを考えたことはないでしょうか?これらは合同式の計算例になっています.nを法とする合同式とは,二つの整数a,bの差がnで割り切れるときに同じであるとみなすと考えたときの等式のことです.nが素数pのいろいろな冪のときに考えることが,p進数の話の基礎となります.この講演では,p進数の話の準備として,合同式の計算をいろいろ行い,また,素数pやその冪を法とした世界で方程式を少し考えてみます.

講演動画

数理ビデオアーカイブで視聴できます

講演資料

『合同式』

講義2:『p進数』 阿部紀行(東京大学大学院数理科学研究科)

数の世界は,整数,有理数,実数,複素数というように広がっていきます.1900年頃ドイツの数学者ヘンゼルは,各素数pに対してこの系列にはのらないp進数という新しい数の体系を発見しました.p進数は有理数を含みますが,実数とは別の世界に属しています.不思議なもののように聞こえますが,現在の整数論ではなくてはならない概念の一つです.p進数を導入し,その基本的な性質についてお話をします.

講演動画

数理ビデオアーカイブで視聴できます

講義3:『Hasse-Minkowskiの定理』 今井直毅(東京大学大学院数理科学研究科)

p進数は,それ自身が面白い数学的対象であるだけではなく,有理数の世界における様々な問題と密接に関係しています.この講演では,p進数や実数の世界と有理数の世界をつなげる Hasse-Minkowskiの定理についてお話しします.

講演動画

数理ビデオアーカイブで視聴できます


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