\magnification=\magstep1 \documentstyle{amsppt} \def\a{\alpha} \def\be{\beta} \def\ga{\gamma} \def\e{\varepsilon} \def\Q{\bold Q} \def\R{\bold R} \nopagenumbers \centerline{1998年度理科II, III類1年生 数学IA期末テスト解説} \rightline{1998年9月10日・河東泰之} \rightline{数理科学研究科棟310号室 (電話 5465-7024)} \rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp} \rightline{homepage http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/} \bigskip 答案の一番上の赤い数字が,1問35点でつけたこのテストの成績, その右の丸囲みの数字が,演習の成績も加味したこの科目の 最終成績です.さらに演習を取っている人にはその右に 演習の最終成績が青い数字で書いてあります. 採点に誤りがあると思う人はただちに e-mailで連絡してください.私はイタリアに 行っているので英文/ローマ字でお願いします.返す答案はすべてコピーが 取ってあります. 演習とこのテストの成績に大きな差があって,片方を落としてしまいそうな 人は,悪い方の点を,両方の点の平均で置き換えました.これを適用した 人の点数には右上にプラス印がついています.この対象者は全部で5人です. [3], [4]は全滅で1人もできていませんでした.それで点が多くなるように 1問35点(140点満点)でつけました.平均点は60.2点,最高点は135点 (2人)です. 総合成績の平均は61点,得点分布は次のとおりです. $$\vbox{\offinterlineskip \def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &\cr} \def\t{\noalign{\hrule}} \def\h{\hfil} \halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr \t\vsp & 0--49 (点) && 50--59 && 60--69 && 70--79 && 80--89 && 90--99 && 100 & \cr \vsp\t & 18(人) && 13 && 3 && 10 && 8 && 5 && 6 & \cr \vsp\t }}$$ \bigskip [1] これはごく標準的な問題です. $f_x= -6 x + 6 x^2 + 6 x y - 6 y^2$, $f_y=3 x^2 - 12 x y + 9 y^2$だから, $f_x=f_y=0$を解くと,$(x,y)=(0,0),(1,1),(9/11,3/11)$となります. $f_{xx}=-6 + 12 x + 6 y$, $f_{xy}=f_{yx}=6 x - 12 y$, $f_{yy}=-12 x + 18 y$となるので,普通の判定法により, $(1,1)$では極小値$-1$を取り,$(9/11,3/11)$では極値を取らない ことがわかります.$x=0$とおいて$y$だけ変化させる ことにより,$(0,0)$では極値を取らない ことがわかります. \bigskip [2] 極座標に変換すると, $$E=\{(r,\theta)\mid 0\le r\le2\sqrt{\cos 2\theta}, -\pi/4\le\theta\le\pi/4, 3\pi/4\le\theta\le5\pi/4\}$$に移ります.(ここで間違えた人が かなりいました.) あとは$E$上で$\dsize\int_E r\;dr\;d\theta$を計算すればよくて, 普通の計算で答えは4になります. \bigskip [3] 大きい番号だけが問題なので$b_n > 0$としてかまいません. 正の$\e > 0$を任意に取ります.仮定より $$ n > N \Rightarrow | a_n-\a b_n-(a_{n-1}-\a b_{n-1})| < \e (b_n-b_{n-1})$$ となる自然数$N$が取れます. $ m > n > N$のとき,上の不等式を順番に足して $$| a_m-\a b_m-(a_{n}-\a b_{n})| < \e (b_m-b_{n})$$ がわかります.($\{b_n\}_n$が単調増大なことを使いました.) 両辺$b_m$で割って $$| \frac{a_m}{b_m}-\a -\frac{a_{n}-\a b_{n}}{b_m}| < \e (1-\frac{b_n}{b_m})$$ となります.$m > N$なので$m\to\infty$とすると$\dsize\sup_n b_n=\infty$ より, $\dsize\limsup_{m\to\infty}\left|\dfrac{a_m}{b_m}-\a\right|\le\e$ がわかります.$\e > 0$は任意だったので,これは $\dsize\lim_{m\to\infty}\left|\dfrac{a_m}{b_m}-\a\right|=0$ を意味しています. \bigskip [4] ほとんどの人が「存在しない」ことを 証明しようとしていましたが,それは誤りです.たとえば $f(x)=\dfrac{\sin x^4}{x^2+1}$が一つの例です. $\dsize\lim_{|x|\to\infty}f(x)=0$なので一様連続になり, もちろん微分可能です.微分すれば有界でないこともすぐに わかります.直感的には小さい振幅,高い周波数で激しく 振動させればこういう関数が作れます. \bigskip [5] (1) 積分の順序を入れ替えれば普通に不定積分できる ようになります.\hfil\linebreak $\dsize\int_0^1 \int_{y}^{10y} \sqrt{xy-y^2}\;dy\;dx=6$が 答えです. (2) $y$で先に積分し,置換積分$y=2x\cos\theta$を行います.(内側の 積分を行う時には$x$は定数です.) $\dsize\int_0^1\int_0^x \sqrt{4x^2-y^2}\;dy\;dx= \dfrac{1}{3}\left(\dfrac{\sqrt3}{2}+\dfrac{\pi}{3}\right)$ が答えです. \bigskip [6] $\log(1+t)$の$t=0$のまわりでのTaylor展開に$t=x^2, -x^2$を 代入して引き算すると,問題の関数は $$2\left(x^2+\frac{x^6}{3}+\frac{x^{10}}{5}+\cdots\right)$$ となります.これはべき級数で収束半径が1なので,これ自身が $x=0$のまわりでのTaylor展開です.順番に微分しようとすると 泥沼にはまります. \bye