\magnification=\magstep1 \documentstyle{amsppt} %\hcorrection{-2truecm} % for Tokyo University printer \pagewidth{14truecm} %18-2.5*2 \pageheight{20truecm} %26-2*2 \nologo %\baselineskip 12pt %\def\normalbaselines{\baselineskip12pt %\lineskip1pt\lineskiplimit0pt} \centerline{関数解析学(河東泰之)の講義内容} \bigskip 毎週水曜13:15から15:15,103号室(理学部5号館),4月7日開講 \medskip 作用素環論のうち,V. F. R. Jonesによって創始されたsubfactorの理論を 初歩からとり扱う. 結び目の不変量Jones多項式が1984年に発見されて以来,作用素環論と3次元 トポロジー,可解格子模型,量子群,共形場理論などとの深遠な関連が次々 明らかになって来ており,subfactor理論は短期間に作用素環論の中心的な テーマの一つとなった. 作用素環論の立場からも,また他分野との関連を調べる立場からも,subfactor のcombinatorialな構造を支配する基本理論はparagroup理論と呼ばれるもの であるが,その創始者A. Ocneanuは,1987年に公理系とそのいくつかの帰 結を(証明・説明抜きに)発表しただけで,その後も細部の証明をまったく 書いていない.そのため,paragroup理論の重要性は誰もが認めていながら, 作用素環論の専門家の中でも難解な理論として敬遠されることが多く,実際 に研究している人の数はごく少ない.重要な基本事項が,どの文献にも書か れていなかったり,未出版の学位論文,非公式の講義録,手書きノートのコ ピーなどでしか読めなかったりするという事態もこの傾向に拍車をかけてい る. しかし実際は,paragroup理論は基礎からきちんと展開すればむしろ初等的 な理論であり,予備知識もごくわずかですむ.本講義は,このparagroup理 論をまったくの初歩から取り扱い,すべての基本的部分に完全な証明を付け る世界で初めての講義である.この理論は,解析的に難解な部分から分離す ることができるため,作用素環論の予備知識は何も仮定せず,3年後期程度 の関数解析だけを前提に,最短期間で最先端の研究トピックに到達すること が可能である.講義中,多くの未解決問題にも言及する予定である. 講義計画: (1) 作用素の強収束,弱収束と,von Neumannのdouble commutant theorem (2) AFD II$_1$ factorとその一意性 (3) II$_1$ factorのmoduleとJones index (4) basic constructionとhigher relative commutant (5) II$_1$ factorのbimoduleとintertwiner (6) II$_1$ factorのFrobenius reciprocity (7) Ocneanuのencoding argumentとflat connection (8) commuting squareとOcneanuのcompactness argument (9) Dynkin図形上のflat connection (10) 結び目のJones多項式 (11) quantum $6j$-symbolとTuraev-Viro型の3次元多様体の位相不変量 (12) Wess-Zumino-Witten modelからparagroupへ (13) 可解格子模型とYang-Baxter方程式 \bye