私のNon-standard Analysisの全学ゼミに出ていた皆さんへ,
アンケートに書いてもらったことにいくつか答えようと思いましたが,
もう講義は終わってしまったので,登録学生証番号を見て全員にメー
ルで送ります.
河東泰之

・scopeがよくわからない.
途中からやり始めたように,集合の元の記号(εみたいなやつ)に*を
つけるのを最初から全部略してしまって,scopeなんていう言葉を出
さなくした方がわかりやすかったかもしれません.下にあげるデービ
スの本はそういう書き方をしています.

・*-open setがよくわからない
Uがopen setである,という論理式を*解釈したものです.もとから
開集合であるAに*をつけたものは*-open setですが他にもたくさん
あります.(例: 半径無限小のball.)

・この後読めるような本が知りたい
読みやすい入門書としては,「超準解析」(デービス著,培風館)が
あります.授業ではだいたいこの本の前半をカバーしたことになって
います.距離空間のあたりはこの本の流儀に従いました.これは教養
の図書館にあるようです.
残念ながらなかなか適度なレベルのNon-standard Analysisの本は英語
でもありません.特殊な話題にしぼっていたり,やたらに難しかったり
するものが多いですね.一般的なからくりについては,ultrafilterを
自然数の集合(可算集合)の上のものに限った以外は,授業でかなりちゃ
んとやったつもりです.それ以降は個別の応用になるので,何に応用
するのかが問題になります.元祖の本は,
A. Robinson, "Non-standard Analysis", North-Holland
ですがこれは相当に難しい本です.あとは,
K. D. Stroyan & W. A. J. Luxemburg, "Introduction to the Theory
of Infinitesimals", Academic Press.
A. Hurd & P. Loeb, "An introduction to Nonstandard Real Analysis",
Academic Press.
A. Robert, "Nonstandard Analysis", Wiley-Interscience Publication.
R. Lutz & M. Goze, "Nonstandard Analysis", Springer.
F. Diener & G. Reeb, "Analyse Non Standard", Hermann.
などがありますが,特に薦められると言うことは(残念ながら)ありませ
ん.こういう英語の本は数学科の図書館(1階)にあります.(最後のはフ
ランス語ですが,数学フランス語は簡単です.フランス語選択の人なら
1年生でも読めるでしょう.)教養の学生は数学科の図書館は入れるだけで
借りられないんですが,その辺の先生や学生をうまくつかまえれば,借
り出すことはできるでしょう.数学科の図書館の本は著者名のアルファ
ベット順に並んでいます.

・来学期もこういう授業をして欲しい
純粋数学系のadvancedなものは後期の全学ゼミにはありません.もと
もと進振りの時に数学科に来ることを奨励するために,数学の全学ゼ
ミは前期に多くやるように組んであります.(私は後期は主にイタリ
ア,イギリスに行っていてあまりいません.)数学科の講義はすべて
ここの建物でやっているので,最初にも言ったように,興味があれば
のぞいて見るといいでしょう.