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\def\ran{\rangle}

\centerline{2008年度数学I演習小テスト(2)解説}
\medskip
\rightline{2008年5月8日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

配点は各小問10点ずつです.
最高点は100点(3人),平均点は69.2点でした.
以下簡単に解説します.(これは「模範解答」ではありません.必要なものについて
は授業中にもっと詳しく解説します.)

\bigskip
[1] (1) ある正の実数 $x,y$ に対し,$(x+y)/2 < \sqrt{xy}$ が成り立つ.

(2) 3以上の自然数 $n$ と,自然数 $x,y,z$ で
$x^n+y^n=z^n$ を満たすものが存在する.

(3) ある有理数 $p,q$ であって,$p\neq q$ であるが,どのような有理数
$r$ についても $p < r < q$ とならないようなものが存在する.

元の命題の真偽は聞いていませんが,(1)が真,(2)は自然数を1以上と
して真,(3)は偽です.

\bigskip
[2] (1) 正しい.$x$ は正なので $y=\log x$ とおけばよい.

(2) 正しい.十分大きい $x$ と十分小さい $x$ で,
$x^3+ax^2+bx+c$ の符号が違うので中間値の定理が使える.

(3) 正しい.たとえば $c=|a|+|b|$ とおけばよい.

\bigskip
[3] (1) いくらでも例はありますが,たとえば $A=\bold R$ とすればO.K.です.

(2) $a$ が上界ならば,$a+1$ も上界なので,そのようなことはありません.

(3) $\forall x\in A$ の部分が常に不成立なのでどのような実数 $a$ も
すべて上界の条件を満たしています.

\bigskip [4] このようなものは高校まではどこでもきちんと定義されていない,
ということを認識してほしいということで,出したものです.
「2を$\sqrt2$回かけたもの」というのは定義とはいえません.
「$\log_2 x=\sqrt{2}$ となるような$x$のこと」というのは先に
$\log_2 x$ が定義されていなくては意味がありません.
$p,q$ が自然数のときは,$2^{q/p}$ は 「$2^q$ の$p$乗根」として定義されて
いるので,$\sqrt2=1.4142\cdots$ と書いて
「$2^1,2^{1.4},2^{1.41},2^{1.414},2^{1.4142},\cdots$ の極限」というのが
一応正しい答えですが,なぜこの極限が存在するのか,また,
$\sqrt2$ に近づくほかの有理数列をとっても同じものに収束するのか,は
高校まででは示されていません.

\bye