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\define\e{\varepsilon}
\def\lan{\langle}
\def\ran{\rangle}

\centerline{2008年度数学I演習小テスト(6)解説}
\medskip
\rightline{2008年7月14日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

平均点は44.5点,最高点は100点(2人)でした.各問の解説をつけます.

この演習の成績は次のようにつけます.演習6回のうち一番悪い1回分を
除いた平均点を $x$ とします.(欠席の回は0点とします.)
$0.7x+33$ を四捨五入し,さらに100点を超えた場合は100点で頭打ち
にしたものを成績とします.これによって,平均点は79.0点,最高点
100点(1人),不可なのは半分以上欠席の一人だけとなります.
また期末試験の成績が特によい場合はこれにプラスアルファがつきます.

期末試験の難度は今回の問題で110点満点にした程度のものを考えています.

\bigskip
[1] 各10点です.同じ意味であれば表現の仕方は違っていてもかまいません.

(1) ある $a>0$ とある $b>0$ に対しては,
$Na>b$ となるような自然数 $N$ は存在しない.

(2) ある実数 $x$ とある自然数 $n$ に対しては,$y^{2n+1}=x$
となるような実数 $y$ は存在しない.

(3) ある $\varepsilon > 0$が存在して,どのような
$\delta > 0$ に対しても,$x$ が存在して,
$|x-a| < \delta$ だが $|f(x)-f(a)| < \varepsilon$ とはならない.

\medskip
[2] 25点です.$f(x)=\sin x^2$ とおき,
$$f^{(n)}(0)=\cases (-1)^m \dfrac{(4m+2)!}{(2m+1)!},
&\quad\text{$n=4m+2$, $m$ は整数,と書けるとき},\\
0,&\quad\text{その他のとき}
\endcases$$
を示します.

まず,$f(x)$ は偶関数なので $n$ が奇数のときは
$f^{(n)}(0)=0$ です.$\sin x$ の Taylor 展開を $2n+1$ 次まで行ったもの
を剰余項付きで書いて,$x$ に $x^2$ を代入すると,
$$\sin x^2=x^2-\frac{x^6}{3!}+\frac{x^{10}}{5!}+\cdots+
\frac{(-1)^n x^{4n+2}}{(2n+1)!}+
\frac{(-1)^{n+1}\sin \theta x^2}{(2n+2)!}x^{4n+4}$$
となります.$|\sin \theta x^2|\le1$ であることと,一般に
$f$ が無限回微分可能なとき
$$\lim_{x\to0}\frac{f(x)-f(0)-f'(0)x-\cdots-
\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n}{x^{n+1}}=
\frac{f^{(n+1)}(0)}{(n+1)!}$$
であることより,目標の式が数学的帰納法で示されます.
(上の極限の等式はロピタルの定理を繰り返し使うことに
より示されます.)

以上より答えは
$\dsize\sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n x^{4n+2}}{(2n+1)!}$ と
なります.

$\sin x$ の Taylor 展開の $x$ のところに
$x^2$ を代入すれば
$$\sin x^2=\sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n x^{4n+2}}{(2n+1)!}$$
は出ますが,これではこの右辺が Taylor 展開であることは
示されていません.これだけだと15点です.

\medskip
[3] 25点です.
$y'=y^3$ を繰り返し使うことにより,数学的帰納法で
$$y^{(n)}(0)=(2n-1)!!\frac{1}{2^{(2n+1)/2}}$$ が
示せます.これより,$y$ の $x=0$ での Taylor 展開は
$\dsize\frac{1}{\sqrt2}
\sum_{n=0}^\infty \frac{(2n-1)!!}{2^n n!}x^n$ となります.
ただしここで $(-1)!!=1$ とします.Taylor 展開がこれに等しい
関数として $y(x)=\dfrac{1}{\sqrt2}(1-x)^{-1/2}$ を得ます.
ここまででは,これが本当に解であることは厳密には示されて
いませんが,そうであることは簡単にチェックできるので
O.K. です.(解はこれだけですが,今はそれを示すことは
要求されていません.)

あるいは,$y'=y^3$ より $\dfrac{-1}{2}y^{-2}=x+c$ であり
$y(0)=\dfrac{1}{\sqrt2}$ より $c=-1$ となります.
これより,$y(x)=\dfrac{1}{\sqrt2}(1-x)^{-1/2}$ となります.

\medskip
[4] 各5点です.
$f(x)=\log(x^2+y^2)$ に対し,
$$\align\frac{\partial f}{\partial x}&=
\dsize\frac{2x}{x^2+y^2},\\
\frac{\partial f}{\partial y}&=
\dsize\frac{2y}{x^2+y^2},\\
\frac{\partial^2f}{\partial x^2}&=
\dsize\frac{-2x^2+2y^2}{(x^2+y^2)^2},\\
\frac{\partial^2f}{\partial x\partial y}&=
\frac{\partial^2f}{\partial y\partial x}=
\frac{-4xy}{(x^2+y^2)^2},\\
\frac{\partial^2f}{\partial y^2}&=
\frac{2x^2-2y^2}{(x^2+y^2)^2}\endalign$$
となります.

\bye