〔講義題目〕 | 数理科学の研究フロンティア:宇宙、物質、生命、情報 | ||||||||||||||||||||||||||||
〔講義内容〕 |
本講義では、宇宙の起源、物質の起源、生命の進化、情報と人工知能などの現代科学のフロンティアを、最前線の若手研究者が数理科学という切り口で俯瞰する。授業担当教員がモデレータとなり、理化学研究所の若手研究者をゲストに招き、以下の話題を議論する。ゲスト氏名と話題は、初田哲男「数理が拓く世界」、日高義将「物質の起源を探る」、小澤知己「トポロジカル物性物理の広がり」、黒澤元「数理でせまる生物の時間の謎」、古澤峻「ニュートリノと重力波で探るコンパクト天体」、湯川英美「極微の世界を拓く量子センシング」、田中章詞「生成モデルの数理」である。
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授業担当教員がモデレータとなり、理化学研究所の若手研究者をゲストに招き、以下の話題を議論する。 | |||||||||||||||||||||||||||||
4/11 初田哲男 「数理が拓く世界」 | |||||||||||||||||||||||||||||
様々な自然現象を理解する上で、数学に基づいた理論的体系付け(数理)が果たして来た役割は極めて大きい。18世紀の産業革命以降は、数理は技術革新の礎ともなり、近年では最先端の情報科学も支えている。本講義の1回目では、素粒子、物質、生命、宇宙、情報などにおける数理パワーを概観し、2回目以降の導入とする。 | |||||||||||||||||||||||||||||
4/18、4/25 日高義将「物質の起源を探る」 | |||||||||||||||||||||||||||||
宇宙誕生後、我々の物質はどのように生まれどのような最後を迎えるのだろうか? この講義では、我々の宇宙を構成する物質の起源やそれを支配する物理法則について、これまで人類が明らかにしたこと、まだ未解明なことを、素粒子・原子核・宇宙物理の最新の理論と実験の進展を実例を交えながら紹介する。 | |||||||||||||||||||||||||||||
5/9、5/16 小澤知己「トポロジカル物性物理の広がり」 | |||||||||||||||||||||||||||||
1980年に半導体において量子ホール効果が発見され、「物質の状態のトポロジカルな性質」という極めて抽象的な概念が「ホール電流」という具体的で測定可能な量に影響を与えることが明らかになった。これがトポロジカル物性物理の研究の幕開けである。当初は半導体での特殊な現象かと思われていたトポロジカル物性の考え方の適用範囲はここ10年ほどの間に光学、音響学、地球物理からレゴブロックまで急速に広がってきている。この講義ではトポロジカル物性の基本的な考え方を解説し、トポロジカル物性がなぜこれほど広範な系を記述する枠組みとして機能するのかを理解することを目指す。 | |||||||||||||||||||||||||||||
5/23、5/30 黒澤元「数理でせまる生物の時間の謎」 | |||||||||||||||||||||||||||||
「夜遅くに食べると寝坊しやすい。」「薬効は薬を飲む時間に依存する。」「朝が苦手な人がいる。」昔から私たちはこうした事実を知っているが、その理由を知らない。本講義ではまず、体内時計など生物の時間に関する実験研究の歴史を概観する。続いて、(遺伝子やタンパク質の)ミクロの情報を高校レベルの数学を用いて統合すれば、古くからの身近な謎にせまれることを示す。 | |||||||||||||||||||||||||||||
6/6、6/13 古澤峻「ニュートリノと重力波で探るコンパクト天体」 | |||||||||||||||||||||||||||||
重い恒星の死後に形成されるコンパクト天体は、マルチメッセンジャー天文学の対象、高温高密度環境の検証場所、重元素の起源として注目を集めています。1回目では、恒星進化の概略と、その終焉でありコンパクト天体の誕生にあたる超新星爆発とそこから放出されるニュートリノについて説明し、2回目では、コンパクト天体同士の合体現象と重力波について紹介します。 | |||||||||||||||||||||||||||||
6/20、6/27 湯川英美「極微の世界を拓く量子センシング」 | |||||||||||||||||||||||||||||
原子や電子、光子など、ミクロな世界は、シュレディンガーの猫に代表されるように、わたしたちの直感と異なるふるまいをします。このミクロな世界特有の性質を利用して測定を行うことを量子センシングと言い、従来の測定手法と比べて感度を大きく上げることが期待されているため、盛んに研究が進められています。2015年にアメリカで重力波検出が成功した鍵となった技術も、スクイーズド光と呼ばれる特殊な光を用いた量子センシングでした。本講義では、この重力波検出の例をはじめ、微小な磁場や物体の運動をとらえる量子センシングの仕組みについて、簡単な論理演算、線形代数を用いながら紹介します。 | |||||||||||||||||||||||||||||
7/4、7/11 田中章詞「生成モデルの数理」 | |||||||||||||||||||||||||||||
近年「人工知能が描いた絵」が高額で落札されたことがありました。また、人工知能が「塗り絵をする」とか「白黒写真に色を付ける」といったweb上のサービス等も話題になっています。このように「データを作り出す」タイプの機械学習モデルを総称して生成モデルと呼びます。本講義では、上述したことがこの枠組みでいかにして可能になるのか、その理論的な部分を主に説明する予定です。 | |||||||||||||||||||||||||||||
〔教科書等〕 | 使用しない。
講義内容、参考となる事柄等について、次のホームページで案内する。 https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/riken2019.htm |
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〔評価方法等〕 | 出席の把握のため、毎回、質問感想等をミニレポートとして提出してもらう。出席状況により合否を評価する。 |
この講義についての質問等は河東泰之 yasuyuki[@]ms.u-tokyo.ac.jpにメールしてください。
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