氏名: 河東泰之 (かわひがしやすゆき)

分野名: 作用素環

キーワード: algebraic quantum field theory, subfactor

現在の研究概要

私の研究分野は作用素環論です. 作用素環論は広く言って,Gelfand-Naimark によって始められた C*-環の理論と,Murray-von Neumann によって始められた von Neumann 環の理論にわかれます.私は,主に von Neumann 環の 方を研究しています.

私は最初は von Neumann 環上の群作用の分類を研究していました. その後,1990年ごろから Jones の subfactor 理論と Ocneanu による発展を研究するようになり, 2000年ごろからは,場の量子論に対する作用素環論的アプローチである, 代数的場の量子論,特にそれによる共形場理論の研究をしています. これらはいずれも密接に関連しており,研究テーマの 自然な発展としてつながってきたものです.

Subfactor 理論の研究は,組合せ論的・代数的な側面と関数解析的な側面の 二つがあり,私は両方とも研究していて,それが現在につながっています. これに関連した1990年代の私の研究は,次の私の本にまとめられています.

D. E. Evans & Y. Kawahigashi, "Quantum Symmetries on Operator Algebras", Oxford Mathematical Monographs, Oxford University Press, 1998.

最近の研究は,数理物理の関係の人たちと,subfactor 理論を代数的 場の量子論に応用することが中心です.共形場理論に対するもう一つの 数学的理論である,頂点作用素代数の理論との関係についてもさまざま な興味があります.ただし私の研究は数学の立場からのもので, 物理学そのものを研究しているわけではありません.

学生への要望

大学院入学前に勉強しておいてほしいことは.

(1) Lebesgue 積分 (極限と積分の順序交換,合成積,関数空間 Lp(X)など)

(2) Fourier 変換 (Riemann-Lebesgue, Plancherel の定理など)

(3) 関数解析 (有界線形作用素,Hahn-Banach の定理,スペクトル分解など)

(4) 作用素環論の初歩 (C*-環内でのfunctional calculus, Gelfand-Naimark の定理など)

などです.(1)がちゃんとわかっていない人は無理です.(2), (3)が よくわかっていない人もかなり苦しいでしょう.将来博士課程に進学して 作用素環論の研究者になりたいと思う人は,(4)あるいはそれ以上まで理解 しておくと先の選択肢が広がります.また,作用素環論はほかのいろいろな 分野との関連が活発になって来ているので,表現論,確率論,トポロジー, 微分幾何学,ホモロジー代数,数理物理学なども勉強しておくと有利でしょう. ただし多くのことを知っているということは研究するための必要条件でも 十分条件でもありません.知識が少なくても,やる気と能力があれば あとからなんとかすることも十分可能でしょう. それから英語も自由に使いこなせることが大切です.

私のところで研究する内容は広い意味で作用素環論と関係があればよく, 私の研究内容と近いものをやる必要はまったくありません.自分が面白いと 思うことをやるのが一番です.また積極的に外国に出かけていくことを 推奨しています.最近大学のポストへの就職はたいへん厳しくなっていますが, 英語で授業ができれば世界でのチャンスが大きく広がります.

数学を愛している人に来てほしいと思います.

(もう少し詳しい案内はこちらです.)

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