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\def\ran{\rangle}
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\centerline{解析学特別演習II・小テスト (1) 解説}
\rightline{2007年10月15日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

最高点は100点(1人),平均点は51.4点でした.簡単な解説を下につけます.

\bigskip
[1] (点数なし) 本を写していただけの人もいるし,この問題は点数には関係
ないことにしましたが,非常に多くの人が間違えていました.
これらの定理はこの授業で頻繁に使います.これらが身についていないと
$\boxed{\hbox{ほぼ確実についていけなくなります}}$.
怪しい人は$\boxed{\hbox{必ず}}$,
よく復習しておいてください.

チェックでは可測かどうか,すべての点での収束かそれともa.e.か,などはとりあえず
問題としませんでした.重要な点は下記のとおりです.

(1) すべての関数の絶対値が共通の可積分関数で抑えられること

(2) 不等号の向きと,関数が正値であること(あるいは実数値
可積分関数で下から抑えられること)

(3) 単調増大性と,関数が正値であること(あるいは実数値
可積分関数で下から抑えられること)

(2)で不等号を逆向きに書いている人が少なからずいました.もし迷ったのだと
しても,簡単な例(たとえば $\chi_{[n,\infty)}$ など)で考えればどちら向き
かわかるはずです.

\medskip
[2] (40点)
$\mu(A)<\infty$ が必要十分条件です.

これが十分条件であることは Cauchy-Schwarz の不等式からわかります.

必要条件であることは次のようにわかります.
$\mu(A)=\infty$ であったとすると,任意に与えられた $k$ に対し,
十分大きな $n$ をとって $[-n,n]\cap A$ を考えることにより,
可測集合 $B\subset A$ で,$k < \mu(B) < \infty$ となるものが
取れます.これを繰り返し使うことにより,互いに disjoint な
可測集合 $A_n$ ($n=1,2,3,\dots$) で,
$A_n \subset A$, $n^2 < \mu(A_n) < \infty$ と
なるものが取れます.
$$f(x)=\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{\mu(A_n)}\chi_{A_n}$$
とおくと,$\int f(x)\;dx=\sum_{n=1}^\infty 1=\infty$ ですが,
$\int f(x)^2\;dx=\sum_{n=1}^\infty 1/\mu(A_n) < \infty$ となります.

\medskip
[3] (20点$\times3$)

(1) は大変有名なもので,この授業で繰り返し使います.
(2)もどこにでも出ているもので,こちらも
この授業で出てきます.(3)も典型的なパターンの留数計算です.どこにでも
出ていることので,解説は簡単に書きます.これもできなかった人は
よく復習しておいてください.

(1) この積分を二つかけて $\R^2$ 上の積分にして,極座標に直すと不定
積分できる形になります.答えは $\sqrt{\pi}$ です.

(2) 原点中心,半径 $N$ で上半平面にある半円板から,
原点中心,半径 $\varepsilon$ で上半平面にある半円板を除いたものの境界で
積分し,留数計算で $N\to\infty$, $\varepsilon\to0$ とします.
大きい半円周の上の線積分が 0 に行き,小さい半円周の上の線積分から
$\pi$ が出ます.答えは $\pi$ です.

(3) 原点中心,半径 $N$ で上半平面にある半円板の境界上で積分して留数計算
します.$N\to\infty$ としたとき,半円周上の積分は 0 に行き,
$z=i$ での留数から,答えは $\pi/2$ となります.

\bye