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\def\R{{\bold R}}
\def\ep{{\varepsilon}}

\centerline{1996年度解析学VII・関数解析学期末テスト}
\rightline{1996年9月13日}
\rightline{河東泰之}
\bigskip

\bigskip
$$\boxed{\hbox{問題用紙は2枚あります}}$$
\bigskip

この試験は自筆ノート持ち込み可で行います.
(本,プリント,人のノートのコピーなどは不可です.)
時間は3時間です.問題はたくさんありますが,1問20〜30点
でつける予定なので,適当に選択して解いてください.

\bigskip [1]
次のように,空間$X, Y$を定める.
$$\align
X&=(\text{収束先を持つ複素数列全体}),\\
Y&=(\text{0に収束する複素数列全体}).\endalign$$
$x=\{x_n\}_{n=1,2,\dots}\in X$に対し,
$\|x\|=\dsize\sup_n |x_n|$と定めることにより,
通常の線型演算と合わせて$X$はBanach空間,$Y$はその
閉部分空間となる.

この時,Banach空間としての
商空間$X/Y$はどのような空間か.具体的に記述せよ.

\bigskip [2]
$L^2(\R)$上の有界線型作用素の列$\{T_n\}_{n=1,2,\dots}$で
次の2条件をともに満たすものの例をあげよ.
きちんと説明を付けること.

(1) 0でないどの$f\in L^2(\R)$についても,
$\{\|T_n f\|_2\}_n$は0には収束しない.

(2) すべての$f\in L^2(\R)$について,
$\{T_nf\}_n$は0に弱収束する.

\bigskip [3]
$T$をHilbert空間$H$から自分自身への有界線型作用素とする.
このとき次の問いに答えよ.

(1) $\|T\|=\|T^*\|$を示せ.

(2) さらに,$\|T\|\le 1$とし,$x\in H$が$Tx=x$を満たすとする.
このとき$T^*x=x$でもあることを示せ.

\bigskip [4]
$L^\infty(\R)$内で,次の2条件をともに満たす関数列$\{f_n(x)\}_n$の
例をあげよ.きちんと説明をつけること.

(1) $L^\infty(\R)$を
自然に$L^1(\R)^*$と思ったとき,
$\{f_n\}_n$のweak $*$-limit(汎弱極限)は0.

(2) $\{f_n\}_n$は$L^\infty(\R)$内で,0には弱収束しない.

\bigskip [5]
自然数$n$について,$L^2(\R)$の部分空間$X_n, Y_n$を次のように
定める.
$$\align
X_n&=\{f\in L^2(\R)\mid f\text{は}[-n,n]
\text{の外ではほとんどいたるところ
0に等しい}\},\\
Y_n&=\{f\in L^2(\R)\mid \hat f\in X_n\}.\endalign$$
ただしここで,$\hat f$は$f$のFourier変換を表す.
さらに,$X=\dsize\bigcup_{n=1}^\infty X_n$, 
$Y=\dsize\bigcup_{n=1}^\infty Y_n$とおく.

このとき,$X, Y$はともに$L^2(\R)$の稠密な部分空間で,
$X\cap Y=\{0\}$となることを示せ.

\bigskip [6]
$T$を無限次元可分Hilbert空間$H$上の線型自己共役compact作用素とする.
この時,次の条件を満たす,$H$の完全正規直交系
$\{x_n\}_{n=1,2,\dots}$が存在することを示せ.

「$x_n$は$T$の固有ベクトルで,対応する固有値$c_n$は,
$c_n\to 0$を満たす.」

\bigskip [7]
Hilbert空間$L^2(0,1)$を$H$とおき,$[0,1]$上の複素数値連続関数
の全体を$C[0,1]$とおく.
$g(x)\in C[0,1]$に対し,$H$上の有界線型作用素$M_g$を
$(M_g)f(x)=g(x)f(x)$, $f\in H$, $x\in(0,1)$で定める.

この時,$H$上の有界線型作用素$T$で,すべての$g\in C[0,1]$
に対して$TM_g=M_g T$となるようなものをすべて求めよ.

\bye