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\def\R{{\bold R}}
\def\ep{{\varepsilon}}

\centerline{1996年度解析学VII・関数解析学期末テスト解説}
\rightline{1996年9月17日}
\rightline{河東泰之}
\bigskip

答案の中央上に書いてあるのがこの試験の成績,右上に
書いてあるのがレポートも加味した総合得点,そしてその横の
A〜Dが成績です.
配点は,1番から順に,
20, 20, 20, 25, 25, 25, 30点で合計165点満点です.
最高点は160点,平均点は63.4点,試験の得点の分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&& \omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--39 (点) && 40--49 && 50--59
&& 60--69  && 70--79 && 80--89 && 90--99 && 100--109 && 110-- & \cr
\vsp\t
&  12(人) && 4 && 5 && 5 && 8 && 2 && 3 && 2 && 5 & \cr
\vsp\t
}}$$

2回のレポートの点数(ぞれぞれ20点満点)を,
$x_1, x_2$とし,$\min(100,\hbox{期末試験の点数})$を
$x$としたとき,総合得点は
$0.6x+\max(0.2x,x_1)+\max(0.2x, x_2)$で計算しました.(前に
予告したとおりです.)
この総合点の平均点は66.1点,分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&& \omit &&\omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--39 (点) && 40--49 && 50--59
&& 60--69  && 70--79 && 80--89 && 90--99 && 100 & \cr
\vsp\t
&  9(人) && 3 && 6 && 3 && 8 && 5 && 5 && 7 & \cr
\vsp\t
}}$$

成績と点数の対応は次のとおりです.配点,採点基準もこめて
だいぶ甘くしたつもりです.

$$\align
\text{80点以上}&A\;\;\;(\text{17人}),\\
\text{65点以上79点以下}&B\;\;\;(\text{9人}),\\
\text{45点以上64点以下}&C\;\;\;(\text{10人}),\\
\text{44点以下}&D\;\;\;(\text{10人}).
\endalign$$

以下,各問に略解,解説を付けます.実際の答案では
もっと詳しく説明しないと減点になります.

\bigskip
[1] 複素数体$\bold C$に通常のnormが入ったものと同型です.
「Banach空間として」の話をしているのだから,normの入り方まで
見ないといけません.単に線型空間として$\bold C$と同型というだけ
では不十分です.

\bigskip
[2] 例えば,
$(T_n f)(x)=f(x-n)$あるいは$(T_n f)(x)=e^{inx} f(x)$などと
おけばO.K.です.この2つは,Fourier変換で移り合えるので,同じ事です.
これは実質的に授業でやった問題です.

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[3] (1) これも授業でしました.ただ,授業ではBanach空間でやったので,
Hahn-Banachを使いましたが,今はHilbert空間なのでもっと簡単です.

(2) $x\neq0$としてよいので,$\|x\|=1$と仮定できます.
すると,
$$1=|(x,Tx)|=|(T^* x, x)|\le \|T^* x\| \|x\|\le\|T^*\|\le 1$$
より,Cauchy-Schwarzで等号が成り立っているので,
$T^* x=cx$, $c\in\bold C$であることがわかり,$c=1$であることも
すぐ出ます.

\bigskip
[4] 例えば,$f_n(x)=\chi_{[n,\infty)}(x)$などとおいて,
Banach limitの類似を考えればできます.ほかにもいろいろやり方は
ありますが,いずれにしろどこかでHahn-Banachを使います.

\bigskip
[5] $X, Y$がdenseなことはすぐできます.(単調収束定理,あるいは
Lebesgueの収束定理.)

$f$が,ある$[-n,n]$の外でほとんどいたるところ0とすると,
$\dsize \hat f(\xi)=\int_{-n}^n f(x) e^{-ix\xi}\;dx$
なので,$\xi$を複素数に取ることができ,積分記号下での
微分をすると,$\hat f$は全平面で正則になることがわかります.
さらに$\hat f$が,ある$[-m,m]$の外でほとんどいたるところ0であれば,
一致の定理より,$\hat f=0$となります.

Fourier級数を使ってもできます.

\bigskip
[6] スペクトルがすべて実数であること,
スペクトルは可算集合で原点にだけ収束し,原点以外は
多重度有限の固有値であることと,スペクトル分解をくみあわせれば
わりとすぐにできます.(スペクトル分解を使わなくても,直接にもできます.)

\bigskip
[7] $h\in L^\infty(0,1)$の時にも,同様にして
$M_h$を定義すると,答えは
$\{ M_h\mid h\in L^\infty(0,1)\}$です.これらが
$M_g$, $g\in C[0,1]$と可換なのは明らかだから,
$T$が$M_g$, $g\in C[0,1]$と可換だとします.
$E\subset [0,1]$を可測集合とします.測度論で
よくやるように,$g_n\in C[0,1]$で,$0\le g_n(x)\le 1$
でかつ$g_n(x)\to \chi_E(x),\;\hbox{a.e.}$となるものが取れます.
すると,$M_{g_n} T=T M_{g_n}$から,$M_{\chi_E} T=T M_{\chi_E}$が
わかります.定数関数1に$T$を施したものを$h\in H$とします.
$T\chi_E=h \chi_E$がわかるので,$\|T\| < \infty$であることから,
$h\in L^\infty(0,1)$が示せて,$T= M_h$がわかります.

\bye