河東泰之の1999年度研究概要

作用素環 M と部分環 N の組に対し,braidingを使って, 部分環の自己準同型を大きい環に 延長する手法である alpha-induction について,D. E. Evans, J. Bockenhauerとの共同研究を続けた.

まず[31]で,一つのbraidingによる alpha-inductionから生じる M-M fusion rule subalgebraに対し,chiral branching coefficient を用いて その単純直和因子の構造を完全に決定した.これは,去年研究していた, M-M fusion rule algebraの単純直和因子の構造を modular invariant によって記述した結果[29]の「平方根」にあたる結果である.この副産物として, ambichiral braiding の非退化性も証明した.また,この応用として, SU(2)_k に付随したすべての modular invariant, SU(3)_k に付随した conformal inclusion から生じる modular invariant について,fusion rule algebra の構造を具体的に記述した.

さらに[32]で,alpha-induction から生じる既約 M-M morphismのなす systemから生じる Longo-Rehren subfactor について研究した.キーとなる ポイントは,Bockenhauer-Evans の構成した relative braiding が, 泉の意味での half-braiding を与えるということである.これによって, quantum double の作用素環論的実現(の一つ)とみなせる Longo-Rehren subfactor の tensor category が具体的に記述できるようになった. たとえば,Rehren の結果の簡単な別証とより詳しい解析,泉の計算の (一部の)一般化,Ocneanu のアナウンスの一般化,SU(3)_k に付随した conformal inclusion から生じる Longo-Rehen subfactor の構造の決定 などが一挙に得られる.

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