河東泰之の1996年度研究概要

$A_{2n+1}$型のJones subfactor$N\subset M$の asymptotic inclusion $M\vee(M'\cap M_\infty)\subset M_\infty$の $M_\infty$-$M_\infty$ bimoduleにおいて, 私とEvansが[1]で研究していたのと類似の不思議なorbifold 現象が生じる ことをA. Ocneanuが見出した. この,asymptotic inclusionの構成は,subfactor $N\subset M$ における$M$-$M$ bimoduleから,$M_\infty$-$M_\infty$ bimodule を作るもので,Drinfel$'$dのquantum double constructionの subfactor/paragroup理論における類似と見なせるものである.

Evansと私は,このorbifold現象がより一般的なものであり, また,我々が前から[13]でやっていた,同時不動点環としての orbifoldと同一視できることを,$A$型のHecke 環から生じるWenzlのsubfactorを調べることによって示した. すなわち,WZW model $SU(3)_{3k}$に対応するsubfactorの asymptotic inclusionの$M_\infty$-$M_\infty$ bimoduleが, (Ocneanuの意味でのghostを伴った)orbifoldとして記述できる ことを[25]で証明した.さらに asymptotic inclusionの(dual) principal graph も実際に計算した.

Ocneanuの言うorbifoldを,我々がもとから研究しているorbifoldと 同一視したことの系として,$D_{2n}$型($n>2$)のDynkin図形の 偶頂点のなすbimoduleたちに非退化なbraidingが入ることが 示される.これは,OcneanuやTuraev-Wenzlによって,まったく違う 方法で近年導入されたbraidingと同じ物を与えていると期待される.

これらの研究はOcneanuのparagroup理論に基づいている.我々は この理論とそれに関連する理論について,本の 原稿[24]も書いた.この理論は多くの基礎的な部分が 未出版となっていたもので,今回初めてself-containedな形で まとめられた.

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