河東泰之の1995年度研究概要

作用素環論におけるsubfactor理論のうち, 本年度は,自己同型の分類に関する研究を行った. これは,一方においては共形場理論などの組み合わせ論的側面と 密接な関連を持つが,一方ではConnes以来の関数解析的 分類理論の手法もフルに用いている.

論文[23]では,AFD II$_1$ subfactor $N\subset M$がstrongly amenableであるとき,その上のapproximately inner automorphism が,ある条件を満たすときに新たに導入した不変量の組, $(p_a, \gamma_h, \nu)$で完全に分類されることを示した. この種のsubfactorのautomorphismの分類理論は1990年, Loiによって始められ,Loiの不変量による分類としては, 最強のものが1992年,Popaによって得られている. 私の今回の研究は,Loiの不変量が消えているときに,さらに細かい 不変量での分類を目指すものである.今回の不変量の定義の 動機としては,私が1992年以来提唱している,paragroupと flow of weightsの類似が基本にある.また,証明の手法としては, 私が1990〜92年に導入,研究したorbifold construction, Popaの上述の分類定理,私が1992〜94年に導入した 相対$\chi, \kappa$不変量, Connesのcentral sequenceによるautomorphismの分類定理が 用いられる.

特に,Dynkin図形に対応する,index 4未満の場合には, ある一つの場合をのぞいてautomorphismの完全な分類が得られる. また,$SU(3)_k$に対応するWenzlのHecke algebra subfactor の場合も,automorphismの完全な分類が得られる.

また,Ocneanuの創始したparagroup理論は, 作用素環論と,量子群,共形場理論,3次元トポロジーなどの 代数的,組み合わせ論的側面をつなぐ大理論であるが, 多くの重要な基本事項が,非公式原稿,手書きノート,断片的論文 などに散らばり,ごく小数の専門家以外にはアクセス不可能な 状態が続いていた.この理論について,基礎を整備し, 多くの応用や例を加えて,本[24]にまとめた.

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