「対称性の幾何学」(数理・情報一般「数学の現在・過去・未来」), 東京大学, 2011年7月4, 11日
要約:
野山に咲く花や,京都に古くからある建物など,我々が美しいと 感じるものの背後には「対称性」が潜んでいたり,あるいは逆に, 「対称性がくずれている」ことによってほっとするような落ち着きを感じることもあ るでしょう。
そもそも対称性とはなんでしょうか?
「球面が丸い」とか「直線はまっすぐである」など,漠然と認識していることをどう したら数学的にきちんと説明できるでしょうか?
こういった対称性を理解する一つの方法は「動かしてみる」ことです。 「球を回転させる」とか「直線を平行移動する」ことによって,球面や直線の対称性 を理解するわけです。
動かしているのに不動である,あるいは,動いているつもりでもお釈迦様の手のひら を駆け回る孫悟空のように外に飛び出ない,といった性質に着目することによって
この考え方を抽象すると「群による作用」という概念になります。これは,「動 かす⇔対称性」を理解する鍵であり, 現代数学や数理物理において欠かすことのできない基礎概念になっています。
この講義では,数学における抽象的な対称性の雰囲気を伝え,時間があればこの分野 の未解決問題にも触れたいと思います。 配布資料の問題は易しいものと難しいものがまざっています。 すべて解くことは要求していませんが,ざっと眺めて, 講義でお話した「対称性のふしぎ」を思い出すきっかけにしていただければと思います。
© Toshiyuki Kobayashi