Topics on Discontinuous Groups,
colloquium, Nagoya University, Japan, 29 January 2007.

「不連続群の話題から」
名古屋大学談話会,2007年1月29日.

リーマン多様体の場合と異なり、ローレンツ空間のように正定値とは限らない“計量” をもつ一般の空間においては、離散群の等長変換は必ずしも固有不連続になりません。

この談話会では、今週、名古屋大学で行う予定の集中講義のイントロダクションを兼ねて、 リーマン多様体の枠組みを越えると不連続群にどのような現象が生じるかを説明しながら 「等質空間における不連続群論」という新しい領域の紹介をしたいと思います。

例えば、SL(n)/SL(m) (n>m) という特定の等質空間のコンパクト形の存在問題をアタックするために、90年代から、等質空間の構造論、離散群、エルゴード理論、リー群 のユニタリ表現論などの種々の分野からの手法が開発されてきました。この例や、定 曲率という局所的な性質が大域的な形をどのように決めるかという例を最初に取り上 げ、不定計量に関わる不連続群論で、現在何がわかっており、どんな予想があり、ま た、何が未解決であるかについて紹介し、私が何を目指しているのかを解説しようと 思います。

さて、上記の幾何的な問題をリー群論の枠組みで考えると、リー群 G の非コンパクト な部分群 H による等質空間 G/H が与えられたとき、リー群 G の 離散部分群の G/H への自然な作用が「いつ固有不連続になるか」を決定するのが根本的な問題になりま す。この問題を取り扱うために、群論の観点から、「不連続双対」などの基本的な概 念を導入し、“不連続双対定理”や“不連続性の判定条件”がどのように定式化・証 明できるかを紹介します。

最後に、コンパクト形の存在問題や、Calabi と Markus によって発見された「ローレ ンツ空間形は常に非コンパクトであり、その基本群は必ず有限である」という現象が どのように一般化されるか、不連続群の変形問題などについても触れる予定です。な お、集中講義では、思想的に共通する「ユニタリ表現の離散的分岐則」のモジュラー 多様体への応用といった、不連続群と関連のある話題もとりあげたいと考えています。

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© Toshiyuki Kobayashi