Topics on Discontinuous Groups,
(5 lectures), Nagoya University, Japan, 29 January-1 February 2007.

「不連続群論の話題から」
名古屋大学集中講義(5回),2007年1月29日-2月1日.

この講義では、不連続群についての新しい領域である 「等質空間における不連続群論」の最近の話題を中心にお話します。

最初に、この問題の典型例である「空間形問題」を解説します。 特に、不定値計量の定曲率空間の大域的な形に関して、 現在何がわかっており、どんな予想があり、また、何が未解決であるかについて 解説したいと思います。

次に、ローレンツ空間、あるいはもっと一般の不定値計量をもつ空間(擬リーマン多様体) への作用について解説する予定です。 リーマン多様体の場合と異なり、擬リーマン多様体においては、離散群の等長変換は 必ずしも固有不連続になりません。Calabi と Markus によって発見された「ローレンツ空間形 は決してコンパクトになることはなく、その基本群は常に有限である」という現象は リーマン多様体との違いを浮き彫りにする例です。

上記の幾何的な話題をリー群論の枠組みで考えると、リー群 G の非コンパクトな 部分群 H による等質空間 G/H が与えられたとき、 リー群 G の離散部分群の G/H への 自然な作用が「いつ固有不連続になるか」を決定するのが根本的な問題になります。 この問題を取り扱うために、群論の観点から、「不連続双対」などの基本的な概念を導入し、 等質空間 G/H の不連続双対から、 (どういった意味で)部分群 H が復元されるかという 不連続双対定理について解説します。 さらに、リー群 G が一般線形群 GL(n, R) のような 簡約群の場合に「離散部分群の作用がいつ固有不連続になるか」についての 必要十分条件を紹介します。

講義の後半では、不連続性の判定条件の応用として、非リーマン等質空間に対する コンパクト商の存在問題、剛性や変形についても触れる予定です。 固有不連続な作用の概念は、ユニタリ表現の離散分岐則の理論と(手法は全く異なりますが) 思想的なつながりが微かにあります。

講義の最終回では、特に、ユニタリ表現の離散的分岐則の モジュラー多様体への応用といった、不連続群と関連のある話題をとりあげたいと考えています。

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© Toshiyuki Kobayashi