Multiplicity-free Representations and Visible Actions on Complex Manifolds,
The 53rd Geometry Symposium (organized by Kenji Fukaya, Takao Yamaguchi, Atsushi Kasue and Akito Futaki), Kanazawa University, Japan, 5-8 August 2006.

「重複のない表現と複素多様体における可視的な作用」
第53回幾何学シンポジウム(組織責任者=深谷賢治,山口孝男,加須栄篤,二木昭人),金沢大学,2006年8月5-8日

「重複のない表現」は既約表現を一般化した概念であり,直観的にいう と,同じ既約表現が2度以上現れない表現をいう.

古典的な展開定理,例えば,Taylor 展開,Fourier 変換,球関数による 展開,Gelfand-Tzetlin 基底による展開など,普段は意識さえしないくらい 当たり前に使っている展開定理の背後に,「重複のない表現」がしばしば隠 れている.そして,この「重複がない」という性質こそが,これらの展開 定理が人工性を帯びない自然(canonical)なものであり有用であるという ことを背後から支えていると見ることもできる.

それでは,「重複のない表現」はどのようにして発見することができるの だろうか?

この講演では,複素多様体における『可視的な作用』という概念を導入 し,この幾何的条件の下で,無重複という性質が,ファイバーから切断の 空間に伝播するという一般理論を紹介する.

次に,複素多様体がいつ可視的な作用をもつかを調べ,上記の一般論と 合わせることによって,有限次元表現の場合だけでなく,連続スペクトラ ムが現れるような無限次元表現に対しても,さまざまな無重複度定理を一 気に得ることができる.講演では,これまで“散在”していた無重複度定理 が統一的に理解できる例など,できるだけ多くの具体例を通して,上記の 理論の一端を紹介する予定である.

一方,「可視的な作用」をもつ空間上の解析は,群軌道の余次元が高い (従って軌道は連続無限個ある)場合の大域解析を扱うことになる.無限個 の軌道をもつ多様体上の大域解析に関しては,従来,一般的な理論は殆ど 知られていなかったが,定理3.1とそれに引き続く諸結果は,その一つの 試みにもなっている.

この予稿では,これらの内容に関する最近の文献案内に力点をおいた.

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© Toshiyuki Kobayashi