What Are Possible Global Forms of Locally Symmetric Spaces?,
colloquium, Kyoto University, Japan, 12 April 2006.

「局所的に同じ対称性をもつ空間がとりうる大域的な形」
京都大学談話会,2006年4月12日

「局所から大域へ」は20世紀の幾何における大きな流れであり、とりわけ リーマン幾何において大きな成果が得られてきた。その一方で相対性理論で おなじみのローレンツ幾何やもっと一般の不定値計量をもつ擬リーマン幾何 や他の幾何構造(シンプレクティック、複素、. . . )などに関しては、局所的な 均質性を課した場合でさえ大域的な性質は驚くほど何もわかっていない。

局所的な均質性に関していえば、リーマン対称空間をモデルとする場合は、 古典的な多くの結果が知られている:例えば、リーマン対称空間と局所同型 なコンパクト形は常に存在する(Borel)。(一例として、Poincaré 上半平面 に対しては、種数2以上の閉リーマン面がコンパクト形である)。また、高次 元の場合には、大まかにいえば、基本群が幾何構造を決定する(剛性定理)。

その反面、自然なリーマン計量が入らない一般の対称空間では、不連続群 が殆どない場合(Calabi_Markus 現象)や高次元でも「剛性定理」が成り立 たない場合(例えば Goldman による3次元の非標準ローレンツ閉空間形)な ど、個別の不思議な現象が発見されているが、研究分野としては非常に若い 段階にある。

この講演では、非リーマン等質空間の不連続群に関して、リー群の構造論、 エルゴード理論、ユニタリ表現論、離散群のコホモロジーなどの手法を取り 込んだ1990年代以降の研究と問題意識について、群論的な背景からできるだ け具体的な例をあげてお話をしたい。

特に、擬リーマン定曲率空間の大域的な形を問う「空間形予想」や、その “無限小近似” として得られる接対称空間のコンパクト形の存在の必要十分 条件が、Hurwitz-Radon 数を用いて表される(2005)ことを解説する予定で ある。

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© Toshiyuki Kobayashi