「複素多様体における「可視的な作用」と表現論への応用について」
東京大学集中講義
群 G が複素多様体 M に双正則変換として作用し、さらに G の各軌道が M のある totally real submanifold と交わるとき、この作用を可視的(visible action)という。例えば、複素平面におけるトーラス群 S1の作用は可視的である。この集中講義では、群作用がどのような場合に可視的になるかを種々の例で検証する。その解説のために、まず、半単純リー群の構造定理(Cartan 分解や対称対における松木敏彦氏の軌道分解)を紹介し、それをさらに拡張して
U(p)×U(q)\U(n)/U(n1)×U(n2)×U(n3) などの非対称対に対する軌道分解やその作用の可視性についても触れたい。講義の後半では、「可視的な作用」の表現論への応用を説明する。時間が許せば、その一例として
- ユニタリ群の有限次元表現のテンソル積がいつ重複度1で分解するか、といった組合せ論の問題
- フーリエ変換やリーマン対称空間におけるスペクトル分解の重複度が1になる理由(無限次元表現や連続スペクトラムが現れる場合も含む)、
- Kac の Multiplicity Free Spaces などに現れる種々の結果が「可視的な作用」の観点から統一的に説明できることを紹介する。
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© Toshiyuki Kobayashi