On Discontinuous Groups for Non-Riemannian Homogeneous Spaces,
colloquium, Tokyo Institute of Technology, Japan, 8 December 2003.

「非リーマン等質空間の不連続群について」
東京工業大学 大岡山談話会,2003年12月8日

任意のリーマン対称空間に対して,それと局所同型な多様体(Clifford-Klein 形)でコンパクトなものが存在する(Borel).例えば種数2以上の閉リーマン面は,Poincaré の上半平面の Clifford-Klein 形である.この古典的な例からも感じられるように,リーマン等質空間の不連続群は豊富であり,その理論は長い年月にわたって広く,また深く,発展してきた.

一方,計量が不定値の場合の不連続群の様子は,リーマン計量の場合と根本的に異なる.それを象徴しているのが,「正の定曲率をもつ完備ローレンツ多様体は決してコンパクトにはなりえない」という Calabi-Markus 現象であり,それはまた,リーマン多様体の場合とは違った大域的な理論がその背後に存在することを予期させるものでもある.

さて,不定値の計量をもつ等質空間における不連続群論は,まだ若い分野であるが,最近,特にコンパクトな Clifford-Klein 形の存在問題に関して,リー群の構造論,離散群,エルゴード理論,シンプレクティック幾何,ユニタリ表現論などのさまざまな発想に基づいた研究も日・米・仏などで行われ始めるなど,他分野との新しい接点がうまれつつある.

この講演では,非リーマン等質空間の不連続群について,1990年代以降の発展を中心に,できるだけ具体的な例をあげてお話をしたい.

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© Toshiyuki Kobayashi