第17回高木レクチャー招待講演
平成28年6月18日(土)
14:10--15:10,16:00--17:00
京都大学数理解析研究所
大講義室420号室


ゲージ理論とシンプレクティック幾何学における
不変量のカテゴリー化について
深谷賢治
(Simons Center for Geometry and Physics)


Abstract

不変量のカテゴリー化は1990年代から幾何学の種々の分野で盛んに行われている。 その最初の提案はG. Segalによる共形場の理論の公理化であろう。 その頃、3次元多様体のフレアーホモロジー(インスタントンホモロジー)が現れ4次元のドナルドソン不変量の境界付き多様体への一般化を与えることが見出された。 これを2次元多様体を含む場合へ一般化することは、当時様々な形で問題とされた。例えば、アティヤー・フレアー予想と呼ばれる予想はその一部とみなすことができる。 シンプレクテック多様体のラグランジュ部分多様体のフレアー理論から圏を構成することを90年代に筆者が研究した元来の目的はこの2−3−4次元のゲージ理論の構成であった。 サイバーグ・ウィッテン不変量が表れ、それがオスバス・サボーの不変量として偏微分方程式をほとんど用いない形で作り変えていく中で、インスタントンホモロジーやそのカテゴリー化は表舞台から消えたかのように思えるが、実は、オスバス・サボーの不変量の考え方そのものの中に、ゲージ理論のカテゴリー化は組み込まれている。 オスバス・サボーの不変量の枠組みの中で、2−3−4次元のゲージ理論はまとまりつつあると思われる。 一方、シンプレクテック多様体からの圏を構成は、「シンプレクティック多様体の圏」から「A無限大圏の圏」への函手(あるいは高次の函手)の構成として、より「カテゴリー化」されつつあり、またその基礎の元に、元来のフレアーホモロジーのカテゴリー化も進展しつつある。 このような研究の一部について、ご説明したい。