平成27年6月27日(土)-28日(日) |
東北大学 知の館 3階 |
Abstract
力学についての古くて重要な問題のひとつは、群あるいは亜群の作用
に関する不変測度を求めることである。同等な問題は、局所
有限な群や局所半単純な多元環の表現論においても現れ、指標あるいは
跡を求めることに帰着される。同じ問題は、マルコフ連鎖の理論
や測度を保存する作用の近似、マルチンゲール理論などでも現れる。
これらの問題はフィルトレーションとそれらの交わりの粗い分類
を行うことへと帰着される。ここで、フィルトレーション(減少情報系)
とは、標準ボレルあるいは測度空間における部分集合のなすσ-集合族
の減少列のことである。その重要な例として、確率過程の過去から
生成されるフィルトレーション、あるいは分枝グラフ(Bratteli図形)の
パス空間における末尾σ-集合族などがある。
この理論の基本的な概念は標準フィルトレーションの概念であり、
その下では不変測度の分類問題は容易になることが知られている。
実際、標準性によりエルゴード測度をうまくパラメータ付けする
ことが可能になる。
1回目の講義では、上記のような問題を論ずる。
2回目の講義では、種々の異なる数学の分野における標準性の役割
について説明する予定である。