第15回高木レクチャー招待講演
平成27年6月27日(土)-28日(日)
東北大学 知の館 3階


不変測度、脱出境界、分枝グラフとフィルトレーションの標準性
Anatoly Vershik
(St. Petersburg Department of Steklov Institute of Mathematics)


Abstract

力学についての古くて重要な問題のひとつは、群あるいは亜群の作用 に関する不変測度を求めることである。同等な問題は、局所 有限な群や局所半単純な多元環の表現論においても現れ、指標あるいは 跡を求めることに帰着される。同じ問題は、マルコフ連鎖の理論 や測度を保存する作用の近似、マルチンゲール理論などでも現れる。

これらの問題はフィルトレーションとそれらの交わりの粗い分類 を行うことへと帰着される。ここで、フィルトレーション(減少情報系) とは、標準ボレルあるいは測度空間における部分集合のなすσ-集合族 の減少列のことである。その重要な例として、確率過程の過去から 生成されるフィルトレーション、あるいは分枝グラフ(Bratteli図形)の パス空間における末尾σ-集合族などがある。

この理論の基本的な概念は標準フィルトレーションの概念であり、 その下では不変測度の分類問題は容易になることが知られている。 実際、標準性によりエルゴード測度をうまくパラメータ付けする ことが可能になる。

1回目の講義では、上記のような問題を論ずる。

2回目の講義では、種々の異なる数学の分野における標準性の役割 について説明する予定である。