第13回高木レクチャー招待講演
平成25年11月16日(土)16:55--17:55
平成25年11月17日(日)10:00--11:00
京都大学数理解析研究所 大講義室


ケーラー・アインシュタイン計量とファノ多様体
Gang Tian
(Princeton University, Beijing International Center for Mathematical Research)


Abstract

ケーラー・アインシュタイン計量の研究は、50年代にカラビによって始められま した。70年代にヤウとオーバンは、第一チャーン類が負もしくは0のコンパクト なケーラー多様体上のケーラー・アインシュタイン計量の存在問題を解決しまし た。そのあと、ファノ多様体上のケーラー・アインシュタイン計量の存在が、難 問として研究されてきました。ここで、ファノ多様体とは第一チャーン類が正の コンパクトなケーラー多様体のことです。ファノ多様体上のケーラー・アイン シュタイン計量の存在への障害が、初めに50年代の後半に松島により、続いて80 年代初頭に二木により発見され、さらに90年代には、K-安定性が発見されまし た。この講義では、ケーラー・アインシュタイン計量とK-安定性を議論します。

最初の講義では、この二十年間のファノ多様体上のケーラー・アインシュタイン 計量に関する研究を概観し、最近のK-安定なファノ多様体上の存在問題の解決を 説明します。解決のためにキーとなった道具についても解説します。

二番目の講義では、K安定性に焦点をおき、初めの定義と新しい定式化について 説明します。K安定性に関する最新の研究、特にポールによる幾何学的不変式論 の基本的な結果を拡張する、安定なペアに関する結果を議論し、K-安定性がより 広い枠組みの中にどのように捉えられるか説明します。時間が許せば未解決問題 についても述べたいと思います。