Japan. J. Math. 4, 141--252 (2009)

ハミルトン方程式の理論におけるポアソン頂点代数

A. Barakat,A. De Sole,V.G. Kac

Abstract:
我々は,ハミルトン偏微分方程式の可積分性への応用を見込んで,ポアソン頂点代数の理論の基礎を築く.そのような方程式が,無限個の線形独立な包含的な運動の積分を持つような,互いに両立するハミルトン方程式の無限階層に含められるとき,可積分であると言う.階層の構成と運動の積分はレナード・スキームを利用することによって行われる.我々は,このスキームが変形複体$\Omega$の閉$1$形式$\omega_j, j \in \mathbb{Z}_{+}$の無限系列を生み出すことを保証する簡単な条件を見出した.これらの形式が完全であれば,すなわち$\omega_j$がある局所汎関数$\int h_j$の変形微分であれば,後者は,対応するハミルトン・ベクトル場の作る階層の包含的な 運動の積分である.我々は,関数$\mathcal{V}$の代数が「正規」であれば,複体$\Omega$が完全であることを示す.特に,任意の$\mathcal{V}$に対し,$\Omega$の任意の閉形式は,$\mathcal{V}$に有限個の反微分を加えれば,完全になる.KdV,HD,CNW 階層の例について,レナード・スキームがどう働くかを示す.またHD型の CNW 階層と呼ぶ新たな可積分階層を発見した.ドルフマンのアイディアを発展させることにより,レナード・スキームを任意のディラック構造に拡張し,その適用可能性をNLS,pKdV,KN階層に対して示す.