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こういう情報を知らない方が意外といるようなので、特に作用素環論の大学院生に向けて、ここで共有します。ほかに有益な情報をお持ちの方はぜひ私に教えてください。

※ネット上の情報(もちろんこのページも含む!)は、信憑性に欠ける、あるいは不完全な場合も多い。リテラシーを身に着けることも重要である。

OASIS
数年前にできた作用素環の情報が集まったウェブサイト。作用素環に関する世界の研究集会・オンラインセミナーや YouTube チャンネルの情報、ネットで見られる未解決問題のリストや講義録、ポスドク募集など、多くの情報がある。
『数学』RIMS 講究録
日本の数学の歴史が垣間見える。作用素環論が日本の数学の歴史において半世紀以上にわたり研究者を絶やすことがなかった分野であるということもわかる。作用素環論の魅力を他分野の人にアピールしなければならないことはよくあるが、そういう時は『数学』の作用素環関連のいろいろな論説を読むことで、うまい伝え方を学べるかもしれない。かくいう自分はいまだにそういうことが苦手である。
MathOverFlow
数学の割と専門的な話題に関し調べがつかないときに利用(質問・解答)できる。自分は登録はしていないが、考えてわかんないことを検索してみたらヒットすることもある。(ヒットしないことの方がずっと多いけれど。)ここで研究題材を物色する数学者も少なからずいるという。
Weblio, Wiktionary, Hyper Collocation
英語はむつかしいが、今はネットで検索すれば幾らでも調べられる。Weblio は数学の専門用語を調べるには役立たないが、普通の英語の表現を知るには十分。(エライ先生は「ある程度の英語力が付いたら英和/和英辞典は使うな」と言うけど、英英辞典を引くと知らない単語が爆発的に増えがちでつらい気持ちになる。)Wiktionary 英語版はよっぽど専門的でなければ世の中のたいていの単語は調べられる。数学用語もある程度はあるし、語源とかもわかったりする。英語だけでなくあらゆる言語が調べられるため、語学にもとても便利。数学の論文を書く時には Hyper Collocation が使いやすい。
数学の常識・非常識---由緒正しい TEX 入力法(小田忠雄先生)、立川裕二先生による慣習のまとめ
TeX の細かい使い方などに関する、誰も教えてくれないお作法みたいなものはいくつもあって厄介である。そういうことがまとめられている。
Scimago, 作用素環 editor リスト (Thiel 氏), Backlog of Mathematics Research Journals(2022年版)
初めて論文投稿先を選ぶときはふつう指導教員に従うだろうが、その後自立していくには自分で投稿先を決める必要が出てくるはず。上の三つのページでは投稿先を決めるにあたって参考となる impact factor, editor, backlog(投稿から掲載決定、実際の掲載までの平均期間)の情報がそれぞれ得られる。が、これらの情報だけで投稿先を決めるのは危険かもしれない。
Skyscanner
海外出張で安い航空券を調べるときに検索できる。実際に行かないとしても検索するだけで疑似旅行気分になれる。
JREC-IN Portal, 日本数学会公募情報, dfe-ML 公募情報リンク
数学の研究者として生計を立てるためのページ。
Oberwolfach Photo Collection
ドイツにある有名な研究所の写真コレクションが見られる。たのしい。
Mathematics Genealogy Project
誰が誰の弟子か、という情報が調べられる。

数学者のウェブサイト

河東泰之先生
私の師匠。セミナーの準備のしかたのページがとても有名だが、ほかのページも隅々まで読みごたえがある。
Tao 氏
有名な数学者のブログ。莫大な量のページがあり、数学科の学生や若手研究者向けのメッセージも充実している。特に、初めて研究に取り組む/論文を書く/投稿するすべての数学系の大学院生に一読を勧めたい。
Popa 氏
現代作用素環論で最も偉い人の一人。最近は von Neumann 環のいろいろな話がブログにまとめられている。

作用素環および隣接分野の未解決問題

研究を行うには手ごろな研究題材を見つけなければならないが、それはなかなか難しい。題材を見つけるにあたって、未解決問題をたくさん知っておくことは有利であると思うので、ここで紹介する。

※未解決問題とどこかに書いてあるものであっても、よくよく調べたら未解決ではなかった、あるいは問題に不備があったということもよくある。また、同じ問題に取り組む研究者が敵になる可能性もある、ということにも注意が必要。

Kadison の問題リスト (1967)
昔のリストだが、作用素環の未解決問題リストとしては今でもこれが一番有名なのではないかと思う。未解決で残されている問題は少ない。
Halmos "A Hilbert Space Problem Book"
未解決問題ではなく学生向けの作用素論の練習問題集。とはいえ作用素論の問題は作用素環の設定でも考えられることが多いので、問題設定のアイデアは詰まっているはず。作用素論の勉強に使うとしても、簡単な問題の隣に自力で到底解けない問題があったりするので、研究の入り口として適していると思われる。
Halmos の10の問題 (1970)
こちらは作用素論の昔の未解決問題リスト。有名。現在までにほぼ解かれているようだ。(参考:出題から10年後時点におけるサーベイ
Kaplansky の問題 (1956,1970)
これは非可換環、多元環の未解決問題リスト。どれが現在解決済みか自分は全然知らない。Wikipedia にも関連記事がある。
"The Scottish Book" (1935--1941)
85年ほど前、情報伝達手段も限られている時代の数学一般の問題。関数解析の問題もある。面白い。第二版の本には2015年までの進展がまとめられている。
Guirao, Montesinos, Zizler "Open Problems in the Geometry and Analysis of Banach Spaces"
Banach 空間論の未解決問題集。たくさんの問題が載っているが、不完全な情報もあるかもしれない。
Wikipedia の数学未解決問題リスト
数学のあらゆる分野の未解決問題が載っている。学部生くらいの知識で意味が分かる問題も数多くあり、たのしい。これだけたくさんの問題があったらひとつくらい解けそうな気がしてくるが、考えてみるとどれも簡単には解けないので不思議である。学部1年生向けの演習問題を作る際のネタ探しにも役立っている。

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