連絡事項
問題1 この問題は (3) で g の逆写像を求め、それが位相空間の間の写像として連続であることを示すところが最大のポイントです。(1)(2)は g の逆写像が原点との距離によって与えられることに気付いてもらうためのヒントだったのですが、(1)(2)への取り組みが安易すぎて、このことに気付かなかったと思われる答案がかなりありました。
写像 f は線型写像ではありませんので、(1) で t=0 で単射を示しただけでは駄目です。(2) で εδ 論法を用いる際に、値 f (δ) だけ考えて、| t | < δ を満たす t での値 f (t) を考えていないものは不正解です。また、ε と δ の関係に言及していない答案がありましたが、これは言うまでもなく不正解です。なお、表向き δ を持ち出さずに ε だけで書いている答案は、議論が正しければもちろん正解です。
(1) で不用意に tan を用いた答案がありましたが、tan の値は π/ 2 + (π の整数倍) で定義されませんので、うまくありません。もちろん、きちんと場合分けして議論していれば正解です。
また (3) で逆三角関数で用いた答案もありましたが、逆三角関数の一価な分枝を取ると、定義域や値域が制限されますので、うまくありません。
(3) で R ≥0 の開集合 U に対して g (U) が R 2の開集合であると書いてある答案がありましたが、これは誤りです。
R ≥0 がコンパクトであると書いてある答案がありましたが、これは誤りです。
問題2 (1) では、すべての点 p に対して E(p) が空でないことを示すところがポイントですので、これを明示的に示していない答案は不正解です。(2) で示すべき主張は、条件を満たす正数 ε がすべての点 p ∈ X に対して共通に取れることを言っているので、正数 ε が p ごとに異なってよいかのように書かれた答案は不正解です。また (2) ではコンパクト性を用いる必要があるので、コンパクト性を明示的に用いてない答案は不正解です。
さて、(1) で構成した開被覆に X のコンパクト性を適用して有限部分被覆を選び、それに属する開集合の半径の最小値を ε とすれば良いわけですが、それが正であることを明示的に述べることも一つのポイントです。さらに、こうして定めた ε について、(2) で示すべき主張が成立することを示すわけですが、その際に三角不等式を用いて正確に議論することが最後のポイントです。ここで E(p) を定める際に半径を 2ε としたことが効いてきますので、この点を見過ごしている答案は不正解です。
(2)でコンパクト性を明示的に用いていたとしても、コンパクトでない空間にも通用する議論になっている答案は不正解です。実際、距離空間 X がコンパクトでない場合には、与えられた開被覆が有限被覆であったとしても、(2) で示すべき主張は成立するとは限りません。
ルベーグ数の存在定理の別の証明方法をおぼえていて、(2) の途中からそれを適用したと思われる答案が見られました。もちろん、完全な証明を書き下していれば正解ですが、そうでなければ、簡単なことを示すために難しいことを用いて議論している点で不満足です。
なお、選択公理に言及してある答案がありましたが、この問題を解くのに選択公理は必要ありません。
問題3 (1) 写像 f の連続性と商位相の性質から写像 g は連続となりますが、このことに正確に言及する必要があります。また、R 4 がハウスドルフであることに注意すると、g が同相になることを言うには、空間 X がコンパクトであることを言えば良いのですが、R 2 自身はコンパクトでないので、R 2 のコンパクトな部分集合をうまく見つけて、X がその像になっていることを言えばOKです。
(2) ですが、空間 Y はメビウスの帯であり、円周とホモトピー同値となります。このことは、帯の中心線である円周への射影と恒等写像の間のホモトピーを具体的に構成することによって示されます。
(1) で写像 g の連続性を言うのに「写像 f が連続で、商写像 p が連続だから g は連続である」と書いてある答案がありましたが、これは誤りです。
また、f が連続だから開集合の像は開集合であると書いてある答案がありましたが、これは誤りです。X はR 2の商空間だからコンパクトであると書いてある答案がありましたが、これは誤りです。
(2) で X あるいは Y と S1 が同相であると書いてある答案がありましたが、これは誤りです。正しくはホモトピー同値です。Y の元は二つのパラメータ x, y で f (x,y) と表されますが、ホモトピーを構成する際に、Y の各元 p に対して p = f (x,y) となる x, y の選び方に結果が依存してしまっては、ホモトピーが写像として定まりませんので、そのような答案は不正解です。
すでに述べたように Y はメビウスの帯であり S1 ×[-1,1] と同相ではありません。念のために書いておくと、 S1 は [0, 2π) や [0, 2π] と同相ではありませんし、ホモトピー同値でもありません。
写像 f が開写像であると書いてある答案がありましたが、これは正しくありません。写像 f の終域を Y に取り替えた写像は開写像になりますが、これは自明なことではありませんので、証明せずに用いている答案は不正解です。
問題4 求めるホモロジー群は H 0 (X) = Z, H 1 (X) = Z, H 2 (X) = Z, k ≥ 3 のとき H k (X) = 0 となります。例えば、X から北極を除いた集合と南極を除いた集合の和に X を分解し、Mayer-Vietoris 長完全列が使えることを確認したうえで、ホモトピー不変性を用いて長完全列を書き下し、計算すればOKです。もちろん、このほかにも、いろいろな分解の仕方で計算することができます。
Mayer-Vietoris 長完全列が使えるための条件を満たさない部分集合の組を用いた答案は不正解です。もちろん、条件を満たさなかったとしても、何らかの議論をして、Mayer-Vietoris 長完全列が使えることを示したうえでなら構いませんが、そのような答案はありませんでした。
念のために書いておくと、球面も z 軸も X の開集合ではありません。球面および z 軸の X における内部は、ともに北極と南極を除いた集合になります。
Mayer-Vietoris 長完全列の一般形を書き下したものの、具体的な計算をせずに最後の答が書いてある答案がありましたが、これは不正解とみなします。
与えられた集合 X を球面と原点の和集合と勘違いした答案がありました。残念ながら零点です。
7月27日 練習問題は1〜6です。後ろの問題は構想段階のものを誤って掲載してしまったものですので、削除します。解答は出しません。
7月24日 練習問題を作りました。
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この科目は数学科以外の理学部生向けの講義「幾何学XC(本郷)」です。
理学部数学科および大学院数理科学研究科の学生は履修できません。
この講義は金曜1限に理学部4号館1220教室で行います。
この講義は、現代幾何学に関する種々の内容を扱いますが,今年度は,位相空間論の基礎から説き起こして,写像のホモトピーや特異ホモロジー群について述べ,位相幾何学への入門とします。
参考書として次の書籍を挙げておきます。
成績は原則として期末試験によって判定しますが、レポート提出実績などの平常点を参考にすることがあります。
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