幾何学III



火曜日13:00 -- 14:45

担当:河野俊丈


講義概要: 多様体上の微分形式の理論とその応用をテーマとして講義する. まず,可微分多様体の接バンドル,および余接バンドルの概念を 用いて,多様体上のベクトル場と微分形式を定義する. さらに,微分形式の引き戻し,外微分,積分などをの概念を説明し, 境界付き多様体におけるストークスの定理を証明する. また,多様体のド・ラム理論について,その概要を説明する. 微分形式の応用として,写像度,リーマン計量と体積要素などの 話題を解説する.

参考書:
坪井俊, 「幾何学III 微分形式」 東大出版会
森田茂之,「微分形式の幾何学」 岩波書店
服部晶夫,「多様体」岩波全書
Bott-Tu, Differential forms in algebraic topology, Springer GTM



1. 微分形式の幾何学への入門

主にユークリッド空間上の微分形式について入門的な解説を 行う.特に,閉形式,完全形式の概念とその幾何的な意味 を説明する.例として平面から一点を除いた領域における曲線にそった 1次微分形式の積分と回転量との関係について直感的な解説をする.


2. 多様体の1次微分形式

可微分多様体の接バンドル,および余接バンドルの概念を定式化し, 大域的なベクトル場および1次微分形式の定義を述べる.


3. 多様体上の微分形式とその外微分

可微分多様体の余接バンドルの外積の概念を定式化し, 一般の次数の微分形式およびそのウェッジ積の定義を述べる. さらに,微分形式の引き戻し,外微分などを解説する.


4. 微分形式のいくつかの性質

微分形式とベクトル場のペアリングについて説明する. また,ウェッジ積,引き戻し,外微分に関連した微分形式のいくつかの重要な性質を 述べ,多様体のド・ラム コホモロジー群の定義を与える.


5. ド・ラム コホモロジー群の基本性質,ポアンカレの補題

多様体のド・ラム コホモロジー群のについて,反変ファンクターであることなど いくつかの基本性質を示す.また,ホモトピー作用素を構成して, 可縮な多様体についてのポアンカレの補題を証明する.


6. 多様体の向き,多様体上の微分形式の積分

ベクトルバンドルおよび多様体の向きの概念について説明する. さらに,向きづけられたn次元可微分多様体上の n次微分形式の積分の定義を述べる.


7. 境界付き多様体のストークスの定理

境界付き多様体とその向きの概念について 説明する.さらに,境界付き多様体に対して ストークスの定理を定式化して証明する.


8. 体積要素とストークスの定理の応用

リーマン計量について復習し, リーマン多様体に対する体積要素を定義する. また,空間内の曲面の場合などについて, ベクトル解析で学ぶ古典的なストークスの定理 との関連を説明する.


9. 球面のド・ラム コホモロジー群と写像度

球面のド・ラム コホモロジー群を計算する. また,多様体間の写像の写像度の概念を いくつかの方法で定式化する. ストークスの定理の応用として, 写像度のホモトピー不変性を証明する.


10. 1-パラメータ変換群とリー微分

ベクトル場の生成する1-パラメータ変換群の 概念を復習し,それを用いて,微分形式などの ベクトル場に関するリー微分を定義する. また,カルタンの公式などの有用な公式を 示す.


11. リーマン多様体のグリーンの定理 1-パラメータ変換群とリー微分

リーマン多様体上のdiv作用素,ラプラシアンなどを 定義する.リーマン多様体のグリーンの定理を証明する. また,調和関数の性質を述べる.


12. チェイン上の積分とde Rhamの定理

微分形式のチェイン上での積分を定式化し, ド・ラム コホモロジー群とホモロジー群のペアリングを 構成する. 多様体に対するド・ラムの定理を述べる.


13. チェック=ド・ラムの定理

多様体の開被覆に対して定義される チェックコホモロジーの概念を述べ ド・ラムコホモロジーとの関係を定式化する.


14. ド・ラムの定理の証明

二重複体を用いたチェック=ド・ラムの定理 の証明を述べ, ド・ラムの定理の証明の概要と, ド・ラムの定理の応用を述べる.


15. フロベニウスの定理と完全積分可能条件

可微分多様体上の分布が,完全積分可能であるための 条件は分布に属するベクトル場が包合的であるという フロベニウスの定理を示す.また,この定理を微分形式の 言葉で定式化する.




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